最近、集英社から「ロビーストからの警告」というタイトルの本が出版された。著者は岸田冶子さんという人で、アメリカで10数年に渡り、ロビーストとして活動をしてきた女性だ。彼女は自分の経験から日本の読者に、今後の世界情勢のなかで、日本はどう生きていくべきかを伝えている。
簡単に、本の要点をお伝えすると、世界は混沌としている。アメリカもしかりだ。しかし、アメリカにはまだ余力がある。アメリカは自国の利益になることであれば、どんな冒険でもする。たとえば、イランに対する軍事攻撃もやるだろう。というものだ。
日本の中東研究者や国際問題の専門家、といわれている人たちのほとんどは、アメリカはイラクで失敗し、経済的に苦しくなっているから、イラン攻撃はあるまいという分析をしているのだ。
しかし、この岸田さんの分析では、ほぼ確実に、アメリカによるイラン攻撃が行われるだろう、というのだ。私もアメリカがイランに対し、軍事攻撃をする可能性を、捨てきれないでいるが、それを簡単に説明すると、以下のような状況が、予測されるからだ。
:アメリカがイラン攻撃をしなければ、湾岸地域でのイランの立場は強化され、湾岸諸国はイラン怖さから、イランに対し微笑外交を始めるだろう。
:湾岸諸国や金持ち国は、国家も個人もドル離れユーロ買いに動くだろう。
:ドルはますます安価になり、アメリカの経済には大きな負担となろう。場合によっては、輸入物価が上がり、アメリカの貧困層は、生活苦に陥り、暴動が発生する危険もあろう。
そこで、アメリカがイラン攻撃をするとしよう。その場合、どのようなことが予測できるか?
:アメリカはイランの核施設と軍事施設、インフラを空爆する。
:イランは報復として、湾岸諸国のアメリカ軍基地や、都市部をミサイル攻撃する。クウエイト、サウジアラビア、バハレーン、カタールにはアメリカ軍事基地があり、オマーンは海軍基地の使用許可を出している)。
:イランはホルムズ海峡を封鎖する。石油はペルシャ湾から、アジア・マーケットに送れなくなる。
:中国、日本、韓国、台湾は相当の経済的ダメージを受ける。なかでも中国の受けるダメージは、膨大なものとなろう。
:欧州諸国も経済的ダメージを受けるが、ロシア経由のエネルギー供給と、原発があるため、アジア諸国ほどではなかろう。
:アメリカは自国に石油があることと、ラテン・アメリカからの石油輸入があることから、経済的ダメージは意外に少ない。
:ユーロ、円、元、ウオンなどが急激に値下がりし、反対にドル高になる。
:戦後、アメリカは湾岸諸国から、莫大な規模の復興ビジネスを受注する。
:ドルへの買い戻し現象が世界的に起こる。
あまり気持ちのいい予想ではないが、こうしたことが起こる可能性を、完全に捨て切れないのではないか。岸田さんの「ロビーストからの警告」を読んで、それぞれに考えてみていただきたいものだ。