アラブの新聞に、エジプトの識字率が意外に低い、というニュースが掲載されていた。そう思ったのはその新聞の記者ではなく、私だけなのかもしれないが、エジプトはアラブ諸国のなかでは、教育先進国であるがゆえに、驚かされたのだ。そのエジプトの現在の識字率が、なんと30パーセントだというのだ。
このエジプトの識字率は、次第に低下しているとも書いてあった。つまり、エジプトでは貧困レベル以下の人たちが増加し、子供たちが学校へ行けなくなっている割合が、高くなってきているということだ。
字が読めない人たちのなかには、女性の割合が高いのは、致し方ない部分があるかもしれないが、6歳から18歳という若年層の間ですら、300万人が学校へ行っていないというのだ。
これではどれだけ政府が立派なことを言っても、国民の全体的な経済レベル、生活レベルを引き上げることは無理であろう。教育を受けていない層の人たちは結局のところ、その日その日の単純労働にありつければ、幸運ということになろう。
最近、エジプトからは国家公務員の給料が、30パーセント引き上げられた、というニュースが報じられたが、同時に、公共交通網の乗車運賃を引き上げ、タバコの値段も引き上げたということだ。
そのことは、低所得者層が仕事に向かう上で、毎日負担が増したということであり、数少ない贅沢である、タバコの喫煙も、難しくなったということであろう。(タバコが吸えるのは貧困層のなかでも、上位に位置する人たちだ)
しかも、今回の値上げの前には、基礎食品であるパンの大幅値上げがあり、庶民の暮らしは、ぎりぎりまで追い込まれているのだ。そうなると、エジプト社会が暴発するのは、時間の問題かもしれない。
こうした社会的不満の拡大と、緊張のなかでは、戦争が有効な大衆の権力に対する、怒りの矛先を変える手段だ、ということは歴史にいくらでも例がある。レバノンでは内紛の兆しがあり、シリア・イスラエルの間では、戦争の兆しがある。
サウジアラビアでは、イスマイル派(シーア派の一派)の取締りが強化されている。しかも、サウジアラビアを含む湾岸諸国では、いずれもインフレがひどくなってきている。湾岸諸国は外人労働者の不穏な動きを、未然に防ごうとして、危険と思われる労働者たちを、強制退去させてもいるのだ。
つまり、いまの時点で、アラブの国々は何処を見ても、楽観できるところはない。危険はそこまで迫っているということだ。