トルコの夏は水不足懸念

2008年5月12日

 国連開発協力機構の昨年の発表によれば、トルコは世界のなかで、5指に入る水不足の危険のある国だということだ。従って、トルコ政府は毎年夏を迎えるに当たって、貯水ダムの状況を国民に知らせ、節水を呼びかけている。

 今年の状況は昨年よりも悪い地域と、よい地域に分かれているようだ。トルコ全体としては、今年5月現在のダムの貯水量が42パーセントであり、昨年は52パーセントだった。つまり、今年は昨年の貯水量よりも、10パーセント少ないということになる。

 これから夏にかけて、水不足が懸念されるわけだが、貯水量が減少していく主な理由は二つある。

1:気温の上昇によるダムその他での水の蒸発。

2:気温上昇による人の水使用量の増加。

 世界中から観光客やビジネスマンが集まる、イスタンブールについては、イスタンブール向けのダムの貯水量が現在、36800万立方メートルで、昨の同時期には42300万立方メートルだった。

 トルコはそれでも、もし、イスタンブールなりアンカラで水不足が発生した場合、他の地域のダムから水を持ってくることが出来るが、トルコを水源とするイラクやシリアについては、その限りではあるまい。

 トルコのダムから流れ出す水が、イラクやシリアのチグリス、ユーフラテス川に流れているわけであり、水源のトルコが水不足になれば、当然、ダムが放出する水の量は、減らされることになるだろう。

 その場合の対応策が、現在の段階でシリアにもイラクにもあるとは思えない。イラクの国民にとって今年の夏は、銃弾よりも水が最大の苦しみの、原因になるかもしれない。アメリカ軍の侵攻以来、イラクの飲料水事情は、それでなくとも劣悪なのだからだ。

 シリアもイラクと同様に、イスラエルとの戦争やレバノン問題への介入よりも、今のうちから自国の水不足について、対策を検討しておいたほうがよさそうだ。もし、イラクとシリアの政府が水対策を、国の最重点課題として考えるならば、それが平和の第一歩になるかもしれない。その願望は蜃気楼だろうか。