サドル派のマハデイ軍とイラク軍との間で、停戦合意が成立したようだ。結果的に、サドル・シテイでの虐殺は、回避できるということのようだ。
アメリカ軍に支援されるイラク軍が、バグダッドのシーア派住民の居住するサドル・シテイを包囲し、攻撃を始めてから相当の時間が経過している。この間には、何百人という犠牲者が双方に出ている。もちろん、犠牲者の多くは、一般市民であり老人子女だ。
イラク政府はこの犠牲者の構成内容を前にして、さすがに罪悪感を感じているのであろうか。バグダッドのサッカー場に、サドル・シテイの一般住民を集め保護したうえで、本格的なサドル・シテイ攻略を計画した。
イラク政府の呼びかけに従い、多くの一般住民がサッカー場に移動したが、その後に残された人たちは、当然のこととして戦闘員とみなされることになることになる。
たとえそれが、サドル派シンパではあるが、戦闘員でなくてもだ。したがってイラク軍は容赦なく彼らを攻撃できるようになったということだ。
イラク軍と同様に、サドル派のマハデイ軍も、この新しい状況を冷静に判断したのであろう。そうしたなかで、停戦の話しが持ち上がり、合意に達したということのようだ。
だが、果たしてサドル・シテイに残った戦闘員が、完全に停戦合意に従うのか、あるいはサドル・シテイ以外の、バグダッド市内に潜伏するマハデイ軍のメンバーも、停戦合意に従うのかについては、いまのところ定かではない。
マハデイ軍と共に戦っているその他の戦闘員は、果たしてこの合意に従うのだろうか、ということも問題であろう。サドル・シテイに集結し、イラク軍に対する抵抗闘争を展開している人たちが、全てマハデイ軍のメンバーとは言い切れないからだ。
もうひとつの問題は、いまだにイラク軍に対して優位に、しかも、自由に戦闘が展開できている地域のマハデイ軍が、サドル・シテイの停戦にあわせて、戦闘を停止するかということだ。全てのマハデイ軍のメンバーが、サドル・シテイに集結しているわけではなく、いまだにイラクの中南部全域に展開しているのだ。
彼らはいまだに、優位ななかで戦闘を展開しているにも拘らず、何の交換条件もなく、妥協することを望みはすまい。しかも、南部では石油の権益支配の問題が絡んでいるのだ。
イラク軍と政府、あるいはそれをバック・アップするアメリカ軍にとって、現段階で必要な停戦合意は、あるいはサドル・シテイを含むバグダッド市内だけなのかもしれない。そうであるとすれば、サドル・シテイのマハデイ軍戦闘員のみが、その対象になるということであり、他の地域は、次の段階ということになろう。
サドル・シテイは限られた面積の地域であり、イラク軍としては包囲が容易であったのであろう。そして、アメリカ軍の空爆の支援を受けて、サドル派のマハデイ軍に、しかるべきダメージを、与えることが出来た、ということであろう。
今回の合意は、ある意味ではイラク軍の、勝利の結果ということであろう。もちろんだからといって、マハデイ軍が今後、イラク政府に対する抵抗闘争を、止めるということではないが。
サドル・シテイの停戦合意
2008年5月11日