世界中でいまインフレが起こっている。先日訪問したトルコなどでは、ガソリンの価格が日本より高い、1リットル320円程度だった。トルコ・リラ(トルコの通貨)が値上がりしているのと重なって、庶民の暮らしは相当厳しいものになっている。そうなると、庶民感情としてどうしても、革新系よりも保守的な政党を支持する傾向が、顕著になるようだ。
湾岸の産油諸国でも、同様にインフレが嵩じている。これら湾岸諸国は石油やガスを生産していることから、他のアラブ諸国に比べ問題は軽度だが、それでも生活への影響はある。なかでも、人口の一番多いサウジアラビアでは、庶民の不満が出てきている。これがイスラム原理主義支持に大きく傾いていくと、サウジラビアの体制は決して、楽観できなくなるだろう。
クウエイトの場合も同様に、インフレが嵩じているが、ここでは女性の政治進出問題、外国人労働者問題(賃上げ要求)などが表面化してきており、政府に対する満足度は、以前ほどではなくなってきている。
シリアもまた、他のアラブ諸国と同様にインフレが嵩じ、ガソリン価格は3倍に跳ね上がっている。そのことは他の消費物資にも影響を与えており、諸物価がそろって、値上がりしているということだ。
湾岸諸国にとって頭がいたいのは、ドルと自国通貨とのペッグだ。簡単に自国通貨とドルとの関係を断つことになれば、アメリカとの関係に悪影響を及ぼす。だからといって、このままにしていたのでは、自国内経済は混乱をきたすことになるのだ。
あまり報じられてこないが、他のアラブの国々も同様の、経済混乱に陥っているものと思われる。そうしたなかで迎えるアラブの夏は、まさにホット・サマーということであろう。
今回イエメンで日本人女性観光客が人質になった。まもなく釈放されたからよかったようなものの、今後は中東各国の危険度が増す、と思っておいたほうがいい。
日本にある安全と、同様の安全がある国などは、世界中何処にも無いと思ったほうが正しいだろう。日本で赤信号を渡るようなつもりで、危険度の高い地域に旅行に向かうのは、大迷惑な話なのだ。
ちなみに、イラン南東部で人質になった学生は、いまだに釈放されていない。いやな話だが、あるいは殺されている可能性も、考えなければなるまい。安全と水がただ同然なのは日本だけだ、ということを頭に叩き込んでから、外国行きを選択すべきだろう。