欧州はエルドアン支持か

2008年5月 7日

 トルコではメーデーのデモが激しく展開されたと、現地の左派新聞は伝えていたが、ヨーロッパの反応はそれほどでもなかったようだ。トルコの左派が期待するほど、デモとそれに対する政府の強硬対応は、欧米では話題にならなかったのだ。

アメリカはトルコ警察の厳しい対応と、それに強硬に抵抗するデモ隊の双方を非難しているが、それは通り一遍のものということであり、公平な判断という形をとったに過ぎまい。

 こうした欧米の、デモとそれに対する、トルコ警察の強硬な対応に対する無反応さに、トルコの左派は失望したようだ。トルコの警察は催涙ガス弾を発射し、警棒でデモ参加者を殴打し、流血の騒ぎとなったが、トルコ国民の反応もそれほどではなかったようだ。

 しかし、政府は警察のデモ隊氏への対応が過激すぎたと考えているようで、デモに対する警察のより高度な対応を、訓練しなければならないと考え始めている。そうでなければ、トルコの民主化に対する外国の目が、厳しくなるからであろう。

 今回の警察の過激な対応について、国民が厳しい受け止め方をしなかったのは、多分にトルコが現在直面している現実的な問題に対する、対処のほうが優先したからであろう。トルコも他の諸国の例外ではなく、インフレが昂進している。物価の値上がりがあり、4月は97パーセントのインフレ率を記録している。ちなみに3月は92パーセントであった。なおトルコ中央銀行は、年度末までには、インフレ率が93パーセントに落ち着くと予測いる。

トルコでもパンをはじめとする食品の価格が上がり、庶民の生活は厳しさを増している。ガソリン価格などは1リットル300円を超えており、日本のガソリン値上がりの比ではない。

 しかし、現在のトルコの経済状況は、全体的に上昇を続けており、将来に対する希望が持てない状態にはない。それは、多分にエルドアン政権の政策の、成果であろう。国民は厳しいなかにも、エルドアン首相の手腕に、将来をゆだねようということであろう。

 確かに、これまでのエルドアン政権の採った経済政策は成功し、その成功の流れが継続している。トルコ政府は経済的好況の中で、対外債務を削減する方針さえも立てているのだ。

 こうしたなかで、イギリスのエリザベスⅡ世女王が、トルコを513日から16日にかけて、公式訪問することが発表された。トルコではギュル大統領や商工会議所会頭との会談のほか、女性団体との会合も予定されている。

 このエリザベス2世女王のトルコ訪問は、トルコに対するイギリスの評価が、高くなってきていることの証ではないか。ヨーロッパ諸国はトルコのEU参加については、厳しい対応を続けているが、将来を考えた場合は、多分にトルコとの良好な関係が、必要だということであろう。

 それは、トルコの人口構成に占める、若者の割合が高いことに理由がある。トルコはヨーロッパ諸国とは異なり、若者層の人口が多く、老人介護者や工場労働者など、質のいい労働力が豊富なのだ。

ヨーロッパの企業が工場を誘致する上でも、ヨーロッパ諸国の人たちが豊かで快適な老後を過ごすにも、トルコがうってつけだということだということなのだ。

 そうしたこともあってか、現在トルコに来る観光客たちは、トルコの住宅がヨーロッパと比較して安価なことや、老後のことを考えてか、自分の家を購入し、そこに滞在する観光客が増えており、その割合は観光客全体の14パーセントにも達しているのだ。

 ヨーロッパ諸国から見て、トルコは将来的に欠くべからざる、パートナーということであろう。