和平合意への8・5%というもう一つの壁

2008年5月26日

 イスラエル政府がパレスチナ自治政府に対して、新たな西岸地区に関する妥協案を提示した。それは西岸地区の85パーセントの土地を除く、残り915パーセントの土地を、パレスチナ側に渡すというものだった。

 一見、このイスラエルの新たな提案を耳にしたとき、それでもパレスチナ自治政府側が、和平合意に妥協しないのであれば、パレスチナ自治政府が頑迷であることに、問題があると考えがちだ。

 しかし、そうだろうか、イスラエル側が最後に手放さないと言っている、85パーセントの土地とは何処なのか。何故その土地にイスラエル側はこだわるのかを考えずに、パレスチナ自治政府の対応をなじることは許されまい。

 イスラエルが妥協をしない土地は、それなりに深い理由があるのだ。たとえば戦略的に重要である。あるいはパレスチナ側はその土地を押さえられることにより、非常に不便な状況におかれる。あるいはそこの土地が観光を含め、経済発展の上で重要だ、といったような理由だ。

 そのことに加え、今回イスラエル政府が示した、西岸地区の土地の返還について、大きな問題が残っている。それは、東エルサレムの土地について、全く言及されていないということだ。

 パレスチナ自治政府、あるいはそれ以前のファタハ(パレスチナ解放運動)がこれまで主張し続けてきたのは、東エルサレムを首都とする、パレスチナ国家の樹立だった。もし、東エルサレムが返還されないのであれば、ファタハもパレスチナ自治政府も、イスラエルの新たな提案に対して、妥協することは出来まい。

 イスラエルにしてみれば、現在のパレスチナ自治政府は、自分たちの懐に金さえ入れば、国家の樹立など真剣に考えていない、とたかをくくっているのであろうが、自治政府の幹部はどうあれ、パレスチナ大衆はそうではない。

 もしパレスチナ自治政府の幹部が、イスラエル側の今回の提案に対して、に妥協するのであれば、必ずパレスチナ自治政府は、パレスチナ大衆のなかで支持を減らし、遂には強硬派が勢力を、拡大していくことになろう。

そうなれば、イラクのアメリカ軍と抵抗勢力のように、あるいはそれ以上に凄惨な戦いが、イスラエル国民とパレスチナ人との間で、長期的に軽続されていくことになろう。それにイスラエル国民は耐え続けられるのだろうか。