先週末にスーダンの首都ハルツームに、JEM(公正公平運動)と呼ばれる武装集団の侵攻があり、オンムドルマン地区は、彼らによって占領された。これに対する政府側の反攻があり、一部報道によれば、反乱側のミリタント200人が殺害され、オンムドルマン地区も政府軍の制圧下に、戻ったといわれている。
このスーダン政府の反撃にあわせ、反政府側のリーダーである、ハサントラビ氏が逮捕されもした。その後、ハサントラビ氏は釈放された、とも伝えられている。政府はこの反政府のイスラム・リーダーの人物ハサントラビ氏が、JEMと関係があるとして、逮捕したということなのだが、状況はそれほど簡単ではないようだ。
ハサントラビ氏はスーダン国内にあって、国民の間に宗教的に強い影響力を持っていることから、スーダン政府は彼に対し、厳しい対応をとることは、難しいという事情がある。
JEMについては、チャド政府と繋がる反政府組織と、スーダン政府によって説明されているが、実際はスーダン軍の将兵によって構成されており、彼らはダルフールでの苦しい戦闘に嫌気が差し、スーダン政府に反発したのだ、とも説明されている。
そう考えてみると、現在、スーダン国内には4つの勢力が、乱立していることになる。ひとつは政府であり、次いでハサントラビ氏の率いるグループ、そしてJEM があり、ブラックアフリカ人からなるSPLAなる集団だ。これらが連携し合い、あるいは反発しあっているのが、現在のスーダンの状況、ということになろう。
JEMはハサントラビ氏のグループと関係があり、二つのグループは部分的に重なる輪を描いている。そして、JEMはSPLAの集団とも重なっており、これも二つの輪が重なっている形を成していよう。全く他のグループとの関係を持っていない、単独の組織が政府ということになるのだが、実際にはJEM ,ハサントラビ・グループ、政府の間には接点が存在する。
これら3つの組織については、条件さえ整えば、合意できる可能性が高いのだ。しかし、SPLA組織との間では、スーダン政府はなかなか、折り合いをつけることは困難であろう。そうなると、ハサントラビ氏の出番があるということであろうか。
スーダンは農業大国になる可能性を秘めていることから、今後、世界が食糧難に向かっていくなかで、世界中から大きな期待を寄せられている国だ。同時に、スーダンには膨大な石油資源が、埋蔵されていることも事実だ。
そもそも、スーダンのSPLAとスーダン政府との紛争は、この石油資源をめぐって始まった、というのが真相だ。欧米がSPLAを支援したのが、紛争の始まりだといわれている。そこに石油欲しさから、露骨に介入してきたのが中国だった。従って、スーダン南部を分離独立させて、石油資源を握ろうとする欧米と、中国との間で摩擦が起こるのは当然であろう。今後、欧米諸国がどう中国に対応していくのかは、意外にスーダン問題を見ていると、分かるのかもしれない。