ホット・サマーになるか中東地域各国

2008年4月29日

 今後の世界がどうなっていくのかという話を、地域研究をしている友人たちと話し合った。そのなかで、お互いが自分の研究地域の近未来について、自由に意見を述べ合った。

 中東について聞かれたときに私が答えたのは、中東地域も世界経済の一部を構成しており、他の地域と共通した未来に向かっているというものだった。

 そして、それは中東各国が既に、経済的混乱期に突入している、というものであり、その経済的混乱は産油国、非産油国の別なく起こっていくだろう、というものだった。

 非産油国はおしなべて、現在インフレが昂じており、パンを始めとした基礎食品の価格が高騰し、食生活にも事欠くような状態が、起こっているのだ。しかも、それは輸入物価の高騰が主な原因であることから、政治的に簡単に解決できる性質のものではないのだ。

 したがって、非産油国は国内的にいずれも、不安定化に向かっていくことが予想される。国によっては、それが体制打倒にまでも、繋がるかもしれない。エジプトの場合には、ムバーラク大統領が次男に、大統領職を継ぐことが、難しい状況になってきている。

ヨルダンやシリア、イエメンなどでも、国内の不満が高まっている。それ以外の国々でも、同様の傾向が見られる。大衆が革命を起こすのは、イデオロギーよるのではなく、パンの不足によるのであり、そのパンの不足がいま、中東地域の各国では現実化しているのだ。

産油国の場合、その国のナショナルと呼ばれる元々の国民は、豊かな生活をエンジョイしているが、その元々の国民あるいは第一級の国民は、国内人口の15パーセントから20パーセントしか占めていないため、そのことから来る不安が、第一級国民の間では広がっているのだ。

サウジアラビアの場合には、他の湾岸諸国に比べ、自国民の人口が多いことから、自国民の間でも不満が高まっているのだ。サウジアラビア人の中から、イスラム原理主義者が多数誕生している原因のひとつは、経済的不平等にあるということは見逃せない。

世界的な物価高騰の中で、二級国民(外国から移住して国籍を取得した人たちなど)や外国からの出稼ぎ者たちは、インフレに苦しんでいるのだ。そうした人たちが暴動を起こす、可能性が高まっているのだ。暴動には至らないまでも、故意に事故を起こしたり、災害を起こす危険性が、見え隠れしているのが、最近の産油国の実態だ。

以前に報告したアラブ首長国連邦の、ドバイで起こった幾つかの事故の場合、よく考えてみると、故意に起こされた可能性が高いのだ。しかも、その事故については、イランやアルカーイダ、イスラム原理主義者による犯行、という簡単な説明が付けられやすい。

これらの事故の真相究明を行われずに、そうした決まり文句で、事故の原因に対する説明行われ、片付けられる状態が続く場合、事故が起こる原因の究明はなされないことになる。そして遂には、暴発の事態に至る危険性があるのだ。

中東諸国に駐在する人たち、そしてビジネスや観光で出かける人たちは、十分にそのことを頭に入れておく必要があろう。世界がひとつに繋がっている現代では、例外の国はないと思ったほうがいいだろう。