ヨルダンのアブドッラーⅡ国王がアメリカを訪問し、ブッシュ大統領に対し、意外なアドバイスをする予定だ、というニュースが流された。
このニュースによれば、アブドッラーⅡ国王は、ブッシュ大統領に対し「中東訪問を取り止めろ」とアドバイスするというのだ。
アブドッラーⅡ国王はその理由について、もしアメリカに新たな中東和平の考えがないのであれば、ブッシュ大統領は中東を訪問しないほうがいい、ということだ。
つまり、パレスチナとイスラエルとの間で、和平への前向きな合意が生まれる可能性がないのであれば、ブッシュ大統領が中東訪問をすることは、かえってアメリカとイスラエルに対する敵意をつのらせ、アメリカと親しい関係にあるアラブ諸国を、苦しい立場に追いやることになるということであろう。
イスラエルはパレスチナ自治政府との間に、今年中の和平合意を口にしているが、他方では入植地を拡大し、ガザの封鎖を継続している。この状況を見ている限り、何処にも和平の兆しが見えないということであろう。
それにしてもヨ、ルダンのアブドッラーⅡ国王がブッシュ大統領に対して、用事も目的も無いのに「中東に来るな」と言うということは、非常に希なことであろう。
その希なことを、アブドッラーⅡ国王が言うということは、ヨルダン国民の不満が高まっているということであろう。
ヨルダンはイスラム同胞団の活動が活発な国であり、多くのパレスチナ難民を抱えていることに加え、ヨルダンの国籍を取得したパレスチナ人の、最も多いアラブの国でもある。
そうした状況下にあるヨルダンを始めとした、親米アラブ諸国をブッシュ大統領が歴訪するということは、これら親米アラブ諸国の国民の不満に、火をつけて回るような危険極まりないことだ、ということであろう。
ブッシュ大統領がこれらの親米アラブ諸国を歴訪するとなれば、当然、イランに対する対応も話し合われることになろう。たとえ、ブッシュ大統領の発言が、威嚇だけに過ぎないとしても、ブッシュ大統領は立場上、「イラン対する軍事攻撃も辞さない。」と語らざるを得ないだろう。
その発言は、アラブの反体制派の大衆を激怒させることになろう。だからこそ、アブドッラーⅡ国王はブッシュ大統領に対し、敢て言い難い「中東を訪問するな」という意見をアドバイスするということであろう。
現在のアラブ世界の状況は、それだけ厳しくなっているということなのだ。