カーター元大統領の努力は水泡?それとも?

2008年4月20日

 アメリカの元大統領カーター氏が、パレスチナのハマース組織とコンタクトを取り、遂にシリアの首都ダマスカスで、ハマースのリーダーであるハーリド・ミシャアル氏と会談した。

 カーター氏とハーリド・ミシャアル氏との会談は、先週2度に及んだようだ。その内容については、ハマース側がかん口令を敷き、マスコミにもほとんど情報が伝わっていないようだ。

 それは受け止め方によっては、全く進展がなかったからだとも取れるし、また別の受け止め方をすれば、非常にデリケートな問題が話し合われ、現段階で公表することが、ことの成功を邪魔しかねないからだとも考えられる。

 想像するに、このカーター・ミシャアル会談は、今後のパレスチナ・イスラエル関係に大きな変化をもたらすかもしれない。問題はカーター氏がミシャアル氏との会談を踏まえ、どうイスラエル側を説得するかにかかっていよう。

 カーター氏はイスラエル説得を成功させるために、ハマース側とは現在パレスチナ側に人質になっている、イスラエル兵シャリト氏の釈放を、交渉のメイン・テーマのひとつに据えていたようだ。

 しかし、ハマース側は簡単には、カーター氏の説得を受け入れていないようだ。ハマース側に言わせれば、現在イスラエルの刑務所には、10000人のパレスチナ人が投獄されているが、それを放置したままで、シャリト氏を釈放することは出来ないということであろう。

 もし、釈放がイスラエル・パレスチナの双方から行われるとなれば、マルワーン・バルグーテイ氏の釈放も、交渉の遡上に乗ろう。それは、マハムード・アッバース議長らファタハ幹部にとっては、すこぶる不都合なことだ。

 カーター氏はハマースに対し、無条件でミサイル攻撃を停止するようにも、呼びかけたようだが、これも簡単ではあるまい。あまりにも多くのガザの住民が犠牲にあっているいま、たとえハマースの幹部が、カータ-氏の提案を受け入れたとしても、若い戦闘員たちは素直には従うまい。

 それでもハマース幹部もイスラエルも、カーター氏の努力は平和を生み出す小さな可能性であることを、認識しているようだ。それは、ハマースの幹部がシリアのダマスカスに出向いて、ハーリド・ミシャアル氏らと話し合うことになったことから推測される。

 他方、イスラエル側もオルメルト首相は別としても、イシャイ副首相がカーター氏の持ち寄る、ハーリド・ミシャアル氏との会談内容を、聞くことになっている。オルメルト首相がカーター氏を会わない理由は、彼がカーター氏と会えば、ハマースとの取引を考慮していると、受け止められかねないからだということのようだ。

 エジプト政府は、ハマースを認めないような発言をしながらも、これまで援助を送り、説得を続けてきている。イスラエルのリブニ外相が、カタールの国際会議に参加したことなどを総合して考えると、カーター氏の平和構築の努力は、平和への可能性を感じさせる、一条の光かもしれない。そうあって欲しいものだ。