きな臭くなってきたイスラエル・シリア国境

2008年4月15日

 

 もうエジプトに住んで40年にもなる友人が、一時帰国し、私に電話をくれた。彼が開口一番に言ったことは「知っていると思うけれど、中東で大戦争が起こる危険性が高まっている。もし、戦争が起これば、エジプト・シリア・ヨルダン・サウジアラビア・レバノン・パレスチナが参戦することになろう。」と言うのだ。

 正直なところ、少し唐突過ぎると思えるのだが、注意深く最近の中東の状況を見てみると、彼の予測を無闇に無視することが、出来ない状態があることは事実だ。

 レバノンのヘズブラの戦闘指揮官とも言える、ムグニエがシリアで暗殺されて以来、ヘズブラとイスラエルとの緊張関係は高まっている。ヘズブラはイランから大量の兵器を入手した、とイスラエルも伝えている。

 このムグニエの暗殺をめぐっては、シリアの犯行説がないわけではないが、レバノンのヘズブラにしてみれば、味方のシリアが裏切って彼を暗殺した、とは考えたくないのであろう。

 シリアとイスラエルとの国境も、緊張の度を高めている。シリア軍はバッシャール・アサド大統領の弟の、マーヘル・アサドが司令官に就任している。イスラエルの報じるところによれば、シリア軍はミサイルの照準を、イスラエルに向けているということだ。シリアはイスラエルの動きについて、大規模な軍事行動を起こす、準備を整えていると見ている。

シリア軍はイスラエルとの国境や、レバノンとの国境付近に軍を移動させ、戦闘体制を組んでいるということだ。この情報はイスラエル側だけではなく、アラブ側のマスコミでも伝えられていることから、ほぼ間違いなかろう。

イスラエルは最高度のアラートを発令し、レバノンとシリアの国境を固めている。イスラエルはレバノンのヘズブラが、ムグニエの暗殺に対する報復として、世界中のユダヤ権益をターゲットにすると宣言しているが、もし、ユダヤ人が殺されたり、イスラエルやユダヤの組織や施設が攻撃されることになれば、躊躇せず報復すると明言している。

こうしたイスラエルとシリア・レバノンの緊張状態のなかで、シリアのマスコミや、カタールのアルワタン紙は、今年5月から6月が、戦争の時期ではないかと予測している。これまでアラブ・イスラエル間で起こった戦争は、夏の暑い時期が多かっただけに、今回もそのような予測が出ているのであろうか。

現実は、シリアもエジプトもヨルダンもレバノンも、戦争など出来るような経済状態にはないのだが、国内問題の暴発を防ぐために、戦争をする場合もある。そうでないことを望むばかりだ。

夏になると、日本ではお化けの話が決まって出てくるように、アラブでは戦争の話が出てくる。今回もアラブの戦争の話題が、日本のお化けと同じであることを望むばかりだ。