イスラームの大学者が飲酒許可

2008年4月12日

 シェイク・ユーセフ・カルダーウイといえば、エジプト出身のムスリム同胞団のメンバーで、世界的にも著名なイスラーム学者だ。彼の発するファトワ(イスラーム法に則ったイスラーム権威者が発する裁定)は、広くイスラーム世界で尊重されてきていた。

 シェイク・ユーセフ・カルダーウイは、エジプトを追われ湾岸のカタールに迎え入れられ、そこを拠点として、イスラーム活動を展開していた。その権威あるシェイク・ユーセフ・カルダーウイが、最近になって、意外なファトワを発したのだ。

 シェイク・ユーセフ・カルダーウイの最近の判断によれば、アルコールは微量であれば、飲酒が許されるというのだ。その目安は0・5パーセント程度ということなのだが、この0・5パーセントとは何処から来た数字なのであろうか。

 私が推測するところ、この0・5パーセントというのはノン・アルコール・ビールに含まれる、アルコールのことを指しているのではないか。湾岸諸国は全て、公式には飲酒が認められていないが、ノン・アルコール・ビールは大量に輸入されている。

 シェイク・ユーセフ・カルダーウイの判断によれば、ある程度の酒を飲んでも酔わない人であれば、少量のアルコールが入った飲料を飲んでも、問題を起こさないから、許されるのだという判断であろうか。

 しかし、彼が現在活動しているカタールのある新聞の編集長は、シェイク・ユーセフ・カルダーウイのような著名な人物が、微量のアルコール性飲料を許すことは、ムスリムの飲酒を許可することと同じだ、と反対している。

 今後、このシェイク・ユーセフ・カルダーウイの新説(珍説)ファトワをめぐり、当分の間議論が交わされ、ムスリムのなかに飲酒する者が、増えるものと思われる。同時に、こうした変化に猛烈に反発する、原理主義的な輩も増えることであろう。いずれにしろ、今回のシェイク・ユーセフ・カルダーウイのファトワは、彼が「穏健派、開明派イスラーム学者」であることを、西側諸国に宣伝するためのものであろうか。そうだとすれば、カタールは彼にとって、住み難い国になりつつある、ということかもしれない。