ハリーリ首相暗殺の証人がパリで消えた

2008年4月10日

 レバノンのハリーリ元首相が、レバノンの首都ベイルート市で、2005年2月に暗殺されたが、その後この暗殺事件は、国際的に非常に強い関心を呼び、国連でも取り上げられている。

 これまで語られていたのは、シリアの情報部による犯行という、シリア犯行説がもっぱらであった。そのため、シリアは国際的に、非常に苦しい立場に追い込まれていた。

 そのことは、イスラエルによるシリア非難の上で、イスラエルに有利な立場を与えてもいた。たとえば、シリアの核施設(?)に対する、イスラエルの空爆も、「あのシリアならやりかねない」という免罪符が与えられていたために、イスラエルは国際的に、シリアの施設に対する空爆で、非難を受けることがなかった。

 今度は、シリアがレバノンのヘズブラの背後にいて、イスラエルに対する敵対行動を煽っている、という判断がイスラエルによってなされ、今にも、イスラエルがシリアとの間で戦争を起こしそうな、緊張した状況が生まれている。

 イスラエルもシリアも、レバノンのヘズブラも、いずれもが戦争準備が完了したと主張し、戦争も辞さずの姿勢を示している。

 さてそうしたなかで、フランスのパリ市郊外の自宅で、軟禁状態に置かれていた、ムハンマド・ズヘイル・シッデーク氏が突然姿を消している。彼については、2005年2月に起こったハリーリ元首相暗殺に関係する、証人としてフランス側は受け止めていた。

 今回のムハンマド・ズヘイル・シッデーク氏の失踪については、彼自身が身を隠したのではないかという説と、他の組織によって拉致されたのではないかという説とが流れている。

 常識的に考えれば、シリアの組織、あるいは機関が、ハリーリ事件のすべての証言を抹殺するために、ムハンマド・ズヘイル・シッデーク氏を拉致し、消したのではないかと思える。真相は当分明らかにはなるまい。