4月6日の日曜日に、エジプトでゼネストが計画されていたことは、すでにお伝えし、それがしかるべきレベルのものにならないよう、政府によって押さえ込まれたという話もお伝えした。
さて、今回のゼネスト計画は、主催者が不明だったことが話題になっている。本来であれば、反政府組織としてエジプトでは、最大のムスリム同胞団が指揮を執りそうなものだが、ムスリム同胞団は地方選挙を前に、多数のメンバーや支持者が逮捕されていたこともあり、ゼネストには 始めから参加しない意向をゼネスト以前から公言していた。
それでは何が、この失敗に終わった全国規模のゼネストを、エジプト国内中に伝えたのだろうか。
それは携帯電話だった。携帯電話で個人が口頭で伝えたために、これまでのようにパンフレットから、足が付いて未然に首謀者が逮捕される、という形にはならなかったようだ。エジプトでも携帯電話の普及率は、急激に上昇しているが、それが反体制派や政府の対策に、不満を感じている人たちを結びつけたようだ。
小麦粉の値上がりによる、パンの価格の高騰、食用オイルの高騰など、日用消費物価は平均で、約30パーセントの値上がりが起こっているのだ。これに対して給料は上がらず、他方では、貧富の差が異常なまでに拡大していているのだ。
たとえば、国立病院に20年以上勤務する、医師の月給が80ドルだということだ。もちろん、彼らは私立病院でアルバイトをするのが、当然となっており、そちらの給料のほうが、国立病院の給料より、何倍も多いということになるのだ。
国立病院の医師たちは、当然のように患者の手術や投薬に関して、賄賂を受け取っている者が少なくない。
これまで医師、ジャーナリスト、大学教員、徴税員、テキスタイル品工場労働者などが、組合単位で小規模はデモやストを決行してきていたが、今回はそれが全国規模、全職種で起こるはずだった。
日曜日のストのあと、中心となったカイロの北部にある、マハッラの工場では、結果的に200人を越える逮捕者と、怪我人を出しているようだ。それ以外にも、3大学の学生がストを行い逮捕されている。
ある評論家は、「国民が政府を恐れている以上に、政府が国民を恐れる状況になってきている」と現状を分析しているが、もし、散発的に今回のストがエジプト全土で展開されていけば、最終的には雪だるま式に不満が拡大し、暴発する可能性を、はらんでいるということであろう。
エジプトのゼネストは、今後も注意をして見ていく必要がありそうだ。