ファタハ内部にクーデターの危険

2008年4月 6日

 イスラエルは、ファタハ出身のパレスチナ自治政府議長マハムード・アッバースとの間に、和平を実現しようとしているが、そのイスラエルの唯一の和平交渉相手であるマハムード・アッバース議長の出身母体であるファタハ内部で、若者層のマハムード・アッバース議長を始めとした、ベテラン幹部に対する不満が高まっているということだ。

 このニュースは、イスラエルのエルサレム・ポストが流したものだが、さもありなん。パレスチナ自治政府の幹部による汚職は、これまで何度かお伝えしたが,私が知る以上に、パレスチナ人たちはその実態を知っている。

 マハムード・アッバース議長と彼の仲間による汚職がはびこるなかで、もう一人のパレスチナのスーパー・スターである、マルワーン・バルグーテイは、イスラエルの獄中にある。これまで、パレスチナ自治政府が、イスラエル政府に対して、マルワーン・バルグーテイの釈放を働きかけた、というニュースはあるが、どれだけ真剣に行ったのか疑問だという声が、パレスチナ内部からは流れていた。

 つまり、マルワーン・バルグーテイの人気が、マハムード・アッバースをパレスチナ自治政府の座から、引き摺り下ろしてしまうかもしれない、という不安がファタハ幹部のなかにはあるということだ。

 しかし、ここに来てマハムード・アッバース議長に対する、不信の度合いが高まり、近く開催が予定されている、第6回パレスチナ全体会議を前後して、クーデターが起こるのではないか、と懸念するベテランが増えているということだ。このパレスチナ全体会議は、1989年以来のものであり、これまでに溜まった、パレスチナ幹部に対する不満が、暴発する危険がある、ということであろう。

 この不穏な動きには、ガザの治安担当責任者であった、ムハンマド・ダハラーンや、西岸の治安責任者であった、ジブリール・ラジューブも、加わる可能性があるといわれている。

 ガザではハマースが、武力闘争をイスラエルに対する闘争の手段として、いまだに継続しているが、西岸を統治するマハムード・アッバース議長は、イスラエルに対する武力闘争を、完全に放棄しているようだ。そのことも、ファタハの若手メンバーの不満を、募らせているのであろう。