危険度を増していくかシナイ半島

2008年4月 6日

 エジプトのシナイ半島が、実質的にイスラーム原理主義者や、テロリストの自由な活動の場、と化しつつあるようだ。シナイ半島にはベドウインが居住しているが、彼らはエジプト政府の意向を、まともには受け入れず、彼らの自由な生活を維持している。

 4月5日に、イスラエルへの麻薬の流入に関する報告をしたが、実はマリファナのすべてが、シナイ半島で栽培されたものだ。それがガザのパレスチナ人の手を経て、イスラエル側に流入しているということのようだ。

 シナイ半島に居住するベドウインたちは、エジプトの軍や警察が知らないルートを知っていて、警察や軍が張る監視ポイントを経由せずに、人や物資をイスラエルやガザに届けられるようだ。

 現在も、シナイ半島経由で、イスラーム原理主義者やヘズブラのメンバーが、ガザに出入りしているということらしい。以前に、ガザとエジプトのボーダーが破壊されたとき、多くのイスラーム原理主義者が、ガザに入り込んだというニュースがあったが、それはいわば公然のガザ入りであったと思われる。

 イスラーム原理主義者やヘズブラのメンバーが、ガザに出入りできるということは、武器もまた同じように流入している、ということが想像できよう。言ってみれば、ガザとエジプトとのボーダーに掘られている秘密のトンネルは、それをごまかすためのものなのかもしれない。つまり、本格的な物資(ドルや武器を含む)のガザへの搬入は、シナイ半島のベドウインのルートを通じて、行われているのかもしれない。

 このルートを遮断するには、シナイ半島のベドウインに対する取締りを、強化しなければならないが、それは容易ではあるまい。もし取締りが厳しすぎれば、ベドウインたちは死に物狂いで抵抗してこよう。それは、エジプト国内の不満分子の怒りに、火をつけることにもなろう。

 イスラエル政府はエジプト政府に対して、シナイ半島経由の武器のガザへの搬入に対する監視が、緩過ぎると不満を述べているが、エジプト政府にしてみれば、そう簡単ではないということだ。

 それは、これまでシナイ半島のベドウインによるテロ事件が起こり、エジプトのシナイ半島の観光地では、多数の死傷者が出ているからだ。観光がエジプトの外貨収入に占める割合は非常に大きいだけに、安易に手をつけることは、テロの危険を誘発することにも繋がりかねない。最近の状況を見ていると、今後、シナイ半島の観光は危険度を増すかもしれない。