イスラエル軍がガザ地区に侵攻し、数日の間に１００人を超える、パレスチナ人が犠牲になった。 　この惨劇を通じて、幾つもの状況変化が、生まれたものと思われる。第一に、マハムード・アッバース議長に対する信頼が、パレスチナ人の間で、大幅に後退したのではないか、ということだ。それは、パレスチナ人の間だけではなく、アラブ人全体、イスラム教徒全体のなかでも同様であろう。More...

　アラブのテレビが連続して流す、ガザの惨状に関するニュースは、マハムード・アッバース議長に「裏切り者」｢内通者｣｢日和見｣というレッテルを、貼り付けたようだ。この失われた信用を、マハムード・アッバース議長はどう回復するのだろうか。 　第二には、エジプトとガザとの結びつきが強くなり、イスラエルは半ば、ガザに対する責任を、放棄したのではないかと思われる。これまでも書いてきたように、ガザはエジプトからの水・電力・消費物資の供給を受け、それに依存していくことになろう。問題はその代価を、ハマース政府はどうやって、エジプトに支払っていくかということだ。

　第三には、イスラエルが国際的な非難を受けたという点だ。イスラエルの正当性は、今回の惨劇を通じ、大幅に失われたものと思われる。これもまた、マハムード・アッバース議長と同様に、信用の回復が必要であり、容易なことではあるまい。 　ガザの惨劇は、西岸地区にも飛び火し、ヘブロン・東エルサレム・その他の都市でも、反イスラエルの行動がとられ、数十人が死傷している。事態は、イスラエル軍のガザ撤退だけでは、収まらないのではないか。 　それどころか、イスラエル軍の早期の撤退は、パレスチナ人の間に、ハマースの勝利を印象付け、西岸地区でも、同様の抵抗闘争が起こる、危険性を高めてしまったのではないのか。