トルコ軍のクルド地区撤退は自国方針・米の圧力ではない

2008年3月 1日

 トルコ軍がイラク北部クルド地区に侵攻し、PKKの掃討作戦を行っていたが、2月一杯でその作戦を終了させ、全面的に撤退を決めたようだ。

 このトルコの決定を、多くのマスコミは、アメリカのゲイツ国防長官が、トルコを訪問した後の決定であることから、アメリカの圧力で、トルコ政府はクルド地区から、軍隊を引き上げたかのような報道をしている。More...

 しかし、これは大きな間違いだ。トルコ政府は作戦の開始段階から、この時期で作戦を終了させるよう、軍事行動を進めていたのだ。

 かつて、何でも悪いことが起こればCIAがやったのだ、という考え方をするのがはやった時期があるが、アメリカが圧力をかけたから、トルコ政府が軍をクルド地区から引き上げた、と考えるのはそれに似たような、おろかなことであろう。

 アメリカとトルコ両国政府の、これまでのやりとりを見ていれば、トルコ政府がアメリカの圧力で、クルド地区から撤退することを決めるなどということは、ありえないことが分かるはずだ。

 これまで、トルコ政府の決定に対し、アメリカはしぶしぶ協力してきていた。アメリカ政府がPKKの動きを、逐次トルコに知らせるようになったのも、アメリカがPKKに対して、武器を供与していたことを、トルコ政府から指摘された結果だった。

 トルコ軍は撤退したが、それは完全撤退ではない、と判断しておくべきだろう。それほどトルコとPKKとの関係は、簡単な問題ではないし、日本政府とは異なり、外国政府はそれほど単純な決定はしないのだ。