ターニング・ポイントに到達したイラク戦争

2008年3月20日

 アメリカ軍がイラク侵攻して、既に5年が経過し、6年目に入ったが、アメリカのブッシュ大統領は、5周年を記念して講演し、アメリカ軍のイラク攻撃は成功であったと強調した。

 しかし、現実はそれほどアメリカに、希望を抱かせる状況にはないようだ。ブッシュ大統領の英断で、アメリカ軍のイラク増派を決め、確かに部分的には抵抗運動が和らいでいるようだが、結局のところ、風船の一方を押すと他方が膨らむのと同じ状況が、起こっているだけではないのか。

 もうひとつ言えることは、早晩、アメリカ軍が大幅に削減することを見込んで、イラクの各派は自分のグループの力を温存しておき、来るべきイラク国内の勢力争いに備えよう、としているのでもあろう。  いずれにしろ、イラクから逃れ、あるいはイラク国内を逃げ回り、移動した難民の数は、日に日に増加し、彼らは自分の土地に、そしてイラクに帰ろうとしない。一時、アメリカはイラク難民が帰国していると言ったが、他方では国連難民機関が、イラク難民は増加している、と報告している。難民機関の発表の方が、真実に近い報告をしているのではないか。

 それを裏付けるかのように、最近になって、アメリカ政府とアメリカ軍の力を必要とする、イラク政府の要人たちが、アメリカの政策の失敗を、厳しく指摘し始めている。  最初に、明確にアメリカの政策が、失敗だと指摘したのは、クルド出身のイラクのズイバーリ外相だった。彼はアメリカがイラク攻撃をしたことは正しかったが、その後の対応で、大きな間違いをしたのだと述べている。次いで、スンニー派出身のハシェミ副大統領が、同様の指摘をしている。

 彼らは一様に、イラク戦争から5年が経過したいまなお、イラク国内では医療もインフラも、回復していないと述べている。全くその通りであろう。イラクにはこれまで、世界中から巨額の援助が投入されたにも拘らず、何ら復興は進んでいないようだ。  ブッシュ大統領は、イラク軍が立派に成長したと述べているが、この言葉は近い将来、アメリカが本格的な兵力の削減を、考えていることを示しているのだろうか。あるいは、アメリカとブッシュ大統領は、アメリカの限界を知り始め、認め始めているということだろうか。

 アメリカがこれまで、イラク戦争で費やした費用は、6000億ドルだと伝えられているが、それはアメリカが大国といえども、ボデー・ブロ-のように、アメリカ経済に暗い影を落としてこよう、それ以外の原因もあろうが、やはりアメリカの経済後退は、イラク戦争への間違った対応が、主因ではないのか。  しかし、アメリカの悲劇はだからといって、全面撤退を決意することが、できない状況にあることだ。共和党のマケイン候補はブッシュ大統領の政策の踏襲、継続を口にし、民主党の候補たちは早期の撤退を語るが、現実はそう簡単ではあるまい。