アラブ3本の重要なニュース

2008年3月14日

 アラブの新聞のニュースのなかには、日本のマスコミが取り上げないが、重要なニュースが掲載されている場合がある。私の言う重要なニュースとは、近い将来に、地域に変化をもたらすようなものだ。以下にご紹介するニュースは、その典型的な例であろう。

1:イスラエルのペレス大統領は、現在、イスラエルにとって最も大きな敵は、石油だと語っている。石油がイランに富をもたらし、イランはその富でレバノンのヘズブラやパレスチナのハマースを取り込み、イスラエルに敵対している。

そして、シリアまでも自分の手先としようとしている。したがって、石油は環境汚染を含め、イスラエルの最大の敵だというのだ。ペレス大統領は、このイスラエルのイランに対する不安は、イスラエルだけが抱いているのではなく、アラブの国々もイスラエル以上に、不安と感じていると語っている。

こうした中東の不安定な状況を除去するには、フランスのサルコジ大統領が提唱している、地中海統一機構を作ることが望ましいということだ。

2:エジプトのムスリム同胞団が、今度の選挙を目指し、コプト教徒と連帯を組むというニュースが流れてきた。

ムスリム同胞団が独自で立候補者を立てずに、コプト教徒と連帯を組んだ裏には、最近になって、政府が800人のムスリム同胞団メンバーを逮捕したことによる。

 本来であれば、ムスリム同胞団は異教徒のコプト教徒と連帯するはずがないのだが、今回連帯するというのは、ムスリム同胞団に対する弾圧がエジプト政府からかけられた場合に、コプト教徒がアメリカで、反エジプト政府の運動を起こすことを狙ってではないか。

 キリスト教の一派であるコプト教徒が、エジプトで弾圧されたとなれば、アメリカのキリスト教徒はアメリカ政府に圧力をかけ、何らかの措置をとらせるからだ。このムスリム同胞団の新作戦は、今後いままでになかったような展開を生み出すかもしれない。

3:エジプトでパンの値上げが原因で、インテファーダが起こるか。

 エジプトでは貧困者のために、政府の補助金による、安価なパンが売られてきている。過去に、このパンに対する政府の補助金を、IMFやアメリカ政府の圧力によって、政府が撤廃したところ、暴動が起こったケースがある。

 今回、政府は一般で売られているパン(政府の補助金の対象になっていないパン)を値上げしたところ、中産階級や貧困者層の人たちは、補助金なしのパンは買えなくなり、政府の補助金で安価で売られているパン屋に、殺到するという現象が起きた。この安価なパンは1枚1円程度(5ピアスタ=アラビア語ではキルシュ)で、パン屋の前に出来た列のなかで、順番を争ってケンカが頻発しているということだ。

 この状態が続けば、けが人ばかりではなく、殺人事件も起こる危険性がある。そして、それより先に、庶民が暴動を起こし、それがエジプト全土に広がり、大規模化するかもしれない。通常は温厚なエジプト人も、いったん感情を爆発させると、手に負えなくなる。その危険性に対し、ムバーラク大統領はどんな手を打つのだろうか。