イランの核平和利用会議に参加して

2008年3月12日

 イランが開催した、核の平和利用を討議する国際会議に参加した。あるいは、イランが核の平和利用をする権利があるということを、世界に知ってもらうための会議であった、というほうが正確かもしれない。

 イラン政府からは、ムッタキ外務大臣のほか、IAEAとの交渉に携わってきた多くの博士たち(イランには大学の教員ばかりではなく政府や各機関に博士号を持った人たちが沢山いる)、政府関係者などが意見を述べた。外国からの参加者は、多種多様で核の専門家、国際法の専門家、NGOの代表者などが参加していた。

 会議に参加するまで、会議はイランのプロパガンダ色の強い、政治集会のようなものではないかと考えていたが、実際に参加してみると、イラン側の発言者が、いたって冷静であり、論理的な話の進め方をするのに驚いた。

 たとえば、ムッタキ外相は安保理の対応がダブル・スタンダードではないかと言ったが、これは確かにそのとおりであろう。彼は国名こそ挙げなかったが、イスラエルについて、NPTにもIAEAにも加盟していない、しかも核兵器を持っている国が、わが国の平和利用目的の、核開発を非難している、それをアメリカが支持しているということは、おかしいではないかと語っていた。

 アメリカは以前、イランとの核協力に合意していたが、イラン国民がアメリカの支持していた体制を打倒すると、立場を変え、イランの核開発に厳しい対応をするようになった。イランには核の平和利用の研究を進める、正当な権利があるといった内容だった。

ムッタキ外相の発言のどこにも、論理の展開上、間違っている部分はないと思えた。他のイラン側の発言者も、IAEAとの合意事項を説明し、安保理がその合意を覆した事例を、順次あげながら説明し、ここに私が並べた事例は皆、IAEAや安保理のブログを開けば、載っていますと言っていた。そのとおりであろう。

いまのようなアメリカのやり方では、イランに限らず多くのアラブの政府や国民が、アメリカのやり方に反発を強めていこう。そして、そのアメリカの方針に盲従する日本政府に対して、失望の色を濃くしていこう。

イラン人は紳士であるがゆえに、日本をなじるような物言いはしない。前のイラン大使も「イランに対して、日本が何故このような立場を採るのかは、十分分かっているから、クレームを付けるつもりはない。」と言っていた。

その大使の言葉に対して、私は「時期がくれば、日本はイランの重要性を十分に分かっているから、イランと全面的な協力をするようになる、我慢してくれ。」と返答していた。

これでは、どちらが大人でどちらが子供なのか、どなたにも分かろう。自分の考えをしっかり持たず、自国のみの経済的繁栄を維持することにのみ汲々とし、他国の立場を全く考えないのはどの国であろうか。