コソボは誰のものか

2008年2月23日

 さる日曜日に、セルビアの一部を構成していたコソボが分離して、独立することになった。このコソボの独立は、世界にまたひとつ、イスラム国家が誕生したことを意味している。コソボの住民はアルバニア人であり、彼らはイスラム教徒なのだ。  独立を喜ぶ光景がテレビを通じて流れていたが、車の行列行進と人の波が、テレビ画面からあふれんばかりだった。この喜びの光景を見ているなかで、幾つかのことに気がついた。

 コソボの独立を支持してくれた国々だと思うのだが、各国の旗が壁に描かれていた。アメリカ、EU,トルコなどに加えイランも含まれていたのだ。アメリカはコソボ国家の、誕生を画策した国であり、EUはそれを支持していたのだから当然であろう。 コソボの住民のアメリカに対する期待と、信頼は相当なもののようで、コソボの国旗とアメリカ国旗を、住民たちに配布している光景が目に付いた。

イランについては、イスラム国同士であることと、将来的に支持が期待できることからであろうか。トルコはコソボが、元オスマン帝国の版図だったこともあり、現在なお良好な関係にあるのだ。 コソボの独立に不満なのは、あるいはロシアだけかもしれない。あるいはセルビアに似通ったような国々は、心のなかで今回のコソボの独立宣言を苦々しく思い、かつ自国の将来に対して、不安を抱いているのかもしれない。

ロシアのプーチン大統領は「コソボの独立を認めるのなら、実質的に分離独立して長い、北キプロスも認められるべきだ。コソボだけというのは不平等だ」とアメリカやEUの立場を非難している。 ギリシャもキプロス問題を抱えているだけに、今回の独立宣言には不安を感じている。ギリシャ政府はコソボの独立は、悪しき例を作ったと非難している。ギリシャ以外にも、自国内に少数派を抱える国は、将来、自国が分離される不安を隠せまい。

さて、今回のコソボの独立は、そもそもどの辺に原因があったのであろうか。述べるまでもない、エネルギー資源がコソボ地域に、大量にあることが発見されたためだ。アメリカはセルビアからコソボを切り離し、独立させることによって、コソボのエネルギー資源を独占したいと思ったからだ。 セルビア側が怒りを露にするのも、ロシアが非難する真の理由もこれで分かろう。問題は独立後に、コソボとセルビアの間で戦闘が再発しないか、ということだ。もちろん、セルビアは欧米の合同軍を、敵に回す可能性があるのだから、そう簡単にコソボに戦争を仕掛けることはできまいが。

そうなると残るのは、セルビアがロシアと組んで欧米軍に対抗する、あるいはテロ、ゲリラ戦を展開していく、ということであろうか。コソボの独立はエネルギーに絡んだ、各国の欲の皮が突っ張った結果、出てきたものであるだけに、簡単に受け入れられ、平和で豊かなコソボ国家が成立していく、とは考えるべきではなかろう。