イラク難民は帰国数より出国数が多い

2008年2月 7日

 イラク政府とアメリカは、イラク国内状況が安定化に向かっていることから、シリアに難民として移り住んでいたイラク人が、多数イラクに帰国していると発表した。

 しかし、実態はそうではないようだ。ヨルダン・タイムズが伝えるところによれば実態は次のとおりだ。

シリアからイラクに帰る難民に聞いてみると、彼らのイラク帰国理由は、イラク国内の治安が改善したからではなく、難民として生活する資金が底を尽きたためか、あるいはシリアのビザが切れてしまったからだということだ。

 1月の統計を見ると、毎日1200人がイラクからシリアに、難民として入国しているが、それに対し、イラクに帰国する難民数は700人だった。また1月の国連難民高等弁務官事務所の発表によると、昨年9月から12月までに、シリアからイラクに帰国した者は46、000人だが、イラク政府は同期間の帰国者数を、60、000人と発表している。

イラク政府はこれらイラク国民の帰国を、大々的に世界に発表し、イラクが安定化してきている、と宣伝することを考え、帰国者を集めてプレゼントの贈呈式を行い、イラク政府の治安改善案なるものを公表してもいる。

 現在、シリアにはイラクからの難民が150万人ほど居住しており、そのうち153、516人が難民申請し、難民として正式に録されている。この難民はもちろん、アメリカ軍のイラク侵攻後にイラクを離れ、シリアに移り住んでいるのだ。

 シリアに居住するイラク難民たちは、帰国理由について、46パーセントが資金の枯渇によって帰国せざるを得なくなったと述べ、25パーセントはビザの期間が切れるためだと語っている。ほとんどのイラク難民は、帰国理由がイラク国内の治安改善ではないと語っている。

 イラク国内状況が改善しているか否かは、イラク国民が一番よく分かっているということだろう。