ヨルダン川西岸地区で、最も激しく反イスラエル活動を展開し、遂にはイスラエル側によって逮捕され、投獄されることとなったマルワーン・バルグーテイは、数少ないファタハの英雄的存在、となっている人物だ。

　当然のことながら、ファタハつまりマハムード・アッバース議長を中心とする、パレスチナ自治政府は彼の釈放を、イスラエルとの間で重ねてきた交渉のなかで、第一番目にリスト・アップすべきだと誰もが思うだろう。

しかし、実際にはマルワーン・バルグーテイの名前、釈放リストには載せられないできているようだ。そのことをハマースが暴露し、イスラエルが公表するに至っている。

このイスラエルの報道は、事実であると思われる。これまで、マルワーン・バルグーテイ釈放の声は、西岸地区でもガザでも高かったが、イスラエル側が釈放しない、あるいはイスラエルは釈放要求を、パレスチナ自治政府がしても応じないだろう、といわれてきている。

しかし、今回の暴露で考えられることは、もし、マルワーン・バルグーテイが釈放されるようなことになれば、彼は第一番目に、現在のパレスチナ自治政府に対して、厳しい批判をすることになろう。

それは述べるまでもなく、マハムード・アッバース議長に対する批判、ということになろう。そして、マルワーン・バルグーテイのマハムード・アッバース議長に対する批判は、多くのパレスチナ人とファタハのメンバーにも、支持されよう。

つまり、パレスチナの英雄マルワーン・バルグーテイの釈放は、マハムード・アッバース議長と彼に組する、ファタハの幹部の意向で、いまだに実現していない、と判断できるのではないか。

しかし、今回の暴露によって、ファタハの幹部やマハムード・アッバース議長らは、窮地に立たされるのではないか。

こうした一連の動きは、イスラエルによるパレスチナ自治政府、マハムード・アッバース議長体制の弱体化工作ではないかとも思える。