エジプト・イラン関係修復なるか

2008年1月21日

 中東の三大国が一致団結することが出来れば、中東に横たわる多くの問題の解決が、容易になるのではないか、と思われて久しい。しかし、現実には、なかなかうまく進んでいないようだ。それは、それぞれの国に思惑があり、しかも、自国が第一と考えているからだ。

 述べるまでもない、その三大国とはエジプト、トルコ、イランだ。これらの国々は中東にあって、8千万人に達する人口をようし、それぞれに、歴史と高度の知性を備えているのだ。

 ソビエトが崩壊したあと、アメリカが唯一の超大国となった昨今、中東問題の主導権が、完全に当事国ではない、アメリカの手に渡った感がある。アラブの盟主を気取っていたエジプトにも、何の影響力も残っていない。ただただ、アメリカの意向どおりに、中東問題は推移している。

 しかし、新しい状況が少しずつではあるが、これら三大国を結束させる方向への動きが、見え隠れするようになってきた。それは、イラクに次いで、イランに対するアメリカの軍事的脅威が、拡大してきたからだ。

イランはトルコに対し、何らかの助成を求めるようになり、両国関係は改善の方向にある、と言って間違いあるまい。その具体的な表れは、中央アジアのエネルギーを、イラン経由でトルコに送る、という合意が出来たことから、推察することが出来よう。

イランとエジプトとの間にも、同様に歩み寄りの動きがある。昨年11月にエジプトのアレキサンドリアで開催された、日本とアラブの対話会議で会ったエジプトの外交評議会元議長は「明日からテヘランを訪問する」と語り、エジプトがイランとの関係改善に、乗り出し始めていることをほのめかした。

その後、イランからラリジャニ氏がエジプトを訪問し、両国関係改善の話し合いを行ったことは、すでにこの欄でお伝えしている。しかし、いまだにエジプトとイランとの間には、解決しなければならない、幾つかの難問が横たわっているようだ。

それは、イランがエジプトのサダト大統領暗殺者イスランブーリの名前を、テヘランの通りの名前にしていることに、エジプトが不快感を抱いているからだ。イラン側では、すでにそれは昔の話だと言っているようだが、いまだにその通りの名前は変わっていないし、テヘランの街中には、イスランブーリのポスターも貼られているということのようだ。

エジプトにとって、イランに対して抱く、不満の原因は他にもある。イランが1970年代に占領した、アラブ首長国連邦の3島(アブムーサ島、大小トンブ島)が、そのまま未解決常態になっているのだ。アラブを代表する盟主として、エジプトはこの問題を放置するわけには行かない、ということであろう。

そして、イランが平和利用であるにせよ、核開発に本腰になっていることも、エジプトにとっては愉快な話ではなかろう。イランは否定しているが、若しエジプトではなく、イランが中東最初の核兵器保有国になるとすれば、中東のパワー・バランスは大きく崩れ、エジプトの存在感は小さくなってしまうからだ。

そのことに加え、アメリカはエジプトとイランとの関係が、修復することをなんとしてでも食い止めたい、と考えていよう。エジプトとイランとが連携した第四次中東戦争は、イスラエルにとって、大きな痛手となった経験があるからだ。

とはいえ、今後エジプトとイランとの関係は、トルコの仲介などを含め、少しずつではあれ、前進するのではないかと思われる。それは、関係改善が両国にとって、大きなメリットとなる、可能性があるからだ。