パレスチナの分裂が深刻化の度を強める

2008年1月15日

 パレスチナ政府が、ファタハとハマースの対立により、結果的には権力を分割する形になった。ご存知のとおり、西岸地区はマハムード・アッバース議長のファタハが抑え、ファッヤード氏が新しい首相に任命された。

 しかし、選挙で選出されたハマースのハニヤ氏も首相職に留まり、彼はガザ地区だけを、担当する形になっている。彼が正統な首相であることは、理屈抜きにも分かろう物だが、マハムード・アッバース議長は、ハニヤ首相を首にし、ファッヤード氏を新しい首相に就任させたのだ。

述べるまでもなく、ハニヤ氏が首相に就任したのは、パレスチナ大衆による選挙の結果だったのだが、選挙の結果によって選出されたハニヤ氏を、マハムード・アッバース議長は彼個人の考えで首にしたのであり、そのことはパレスチナ大衆の意思を、無視したことになるのだ。

このいざこざは、結果的に西岸地区とガザとを、全く別個の地域にし、西岸地区を支配するマハムード・アッバース議長が、西側によって抱え込まれ、西側諸国の援助を独り占めにし、ハマースのハニヤ首相が率いるガザ地区を、秤量攻めにしている。

当然のことながら、こうしたマハムード・アッバース議長の横暴に対し、ハマース以外のパレスチナ各派の間からも、非難の声が上がっている。

マハムード・アッバース議長が率いるファタハは、イランとシリアが莫大な資金と武器をハマースに提供し、マハムード・アッバース体制を引きずり降ろそうとしていると非難している。

ファタハから資金が潤沢に流れてくる、PFLPやDFLPはいまだにマハムード・アッバース議長を支持しているようだが、アハマド・ジブリールが率いるPFLP-GCや、ファタハの分派であるアクサ旅団、イスラーム・ジハードなど10組織は、ハマースと同じ立場に立っている。

彼らは1月23日に、シリアの首都ダマスカスで会議を開催し、今後の方針を話し合うようだ。ハマースの代表は、この会議がマハムード・アッバース議長を弾劾する目的で、開催されるのではない、と言っている。

しかし、ファタハ側は、シリアとイランの支援を受け、マハムード・アッバース議長体制を打倒する目的で、会議が開催されると非難している。

どうやら、パレスチナ内部は混乱の度をますます強め、分裂が進むようだ。これでは、イスラエルに和平交渉を遅らせる、口実を与えるだけであろう。イスラエル政府は「和平を望むが一体どのパレスチナの代表と話し合えばいいのか?」と嘯くだろう。それにしてもパレスチナの内情は、「情け無い」の一語に尽きる。