フランスが漁夫の利をつかむ

2008年1月15日

 ブッシュ大統領の中東訪問は、現在の段階で評価するならば、失敗の一語に尽きよう。彼がアラブ諸国の首脳に示したのは、アラブ人が最も嫌う、他者の事を完全に無視した、自分中心の考えかただった。

 パレスチナ問題では、パレスチナ人が解決したい、絶対に譲れない、という核心部分を、全く無視した和平案を語り、多くのアラブ人を、激怒させただけだった。

 湾岸諸国訪問でも、彼が持ち込んだのは、イランに対する締め付けへの協力要請(押し付け)であり、イランが世界を敵にまわす、最も危険なテロ支援国家だ、と言い放った。

しかし、湾岸諸国はイランとの正常な関係を、維持していけるように、それぞれが努力し、イランと話し合っているのだ。そのことに対する、ブッシュ大統領の配慮は微塵もなかった。

極めつけは、アメリカの艦船にペルシャ湾の出口ホルモズ海峡付近で、イランの革命防衛隊のスピード・ボートが接近し、威嚇したというデマ報道だった。それが作られた話であることは、誰にも分かるのだが、ブッシュ大統領は「今度やったらただではおかないぞ」とすごんで見せている。

 そしてもうひとつは、兵器の大量押し売りであり、湾岸諸国はそれを買っても、使いこなせないのだ。言ってみれば、アメリカによる中古になった兵器の、押し売りであったということだ。

しかも、それが何百億ドルにものぼるのでは、買わされたほうはたまったものではあるまい。その上、アメリカはサウジアラビアに売りつけたと同種の兵器を、イスラエルにも提供すると言い、イスラエルに渡すほうが、より優れたものだというのでは、ただただ唖然とするばかりであろう。

アラブ諸国、なかでもパレスチナ人と湾岸のアラブ人たちは、ブッシュ大統領のあまりにも無神経な言動に、うんざりしたことであろう。その間隙を突いて、フランスのサルコジ大統領は、湾岸諸国との間で、いい取引を交わしたようだ。

アラブ首長国連邦との間では、海軍基地を建設し、防衛に協力することにした。このことは、いままでイギリスの独壇場であったアラブ首長国連邦に、フランスが本格的に乗り込み、権益を争う覚悟であることを示したものだ。

ブッシュ大統領の蛮行が、結果的に盟友イギリスの、アラブ首長国連邦における権益を、危ういものにしてしまったのではないのか。