ブッシュ中東訪問は独りよがり

2008年1月14日

 ブッシュ大統領がイスラエルとパレスチナを訪問し、今年中の中東問題解決に努力した。しかも、彼はアメリカ大統領という要職にありながら、5月にも再度中東を訪問して、和平の推進に努力するということだ。

 今回の、ブッシュ大統領の中東訪問の目的は、パレスチナ問題の解決であり、もうひとつは、イランに対する締め付けと、場合によってはイランに対する軍事攻撃への、賛成取り付けにあったものと思われる。

 しかし、パレスチナ問題解決について言えば、ブッシュ大統領の提案は、パレスチナ側が受け入れることの出来ない、難民の帰還権を彼らに対する補償と交換で、あきらめさせるというものだった。領土の問題も境界の問題も、パレスチナ側には受け入れられるものではなかった。

 さすがに厚顔無比のマハムード・アッバース議長も、これだけあからさまに言われたのでは、イエスと答えにくかったのであろう。しかし、かといってノーとも言えず、彼の側近が拒否の発言をするという形を取り、マハムード・アッバース議長は、あたかもブッシュ大統領の仲介で、オルメルト首相との間で話し合いが進んでいるように、にこやかに微笑む写真を大量に、世界の報道機関向けにサービスしたようだ。

 現実は、ヘズブラのナスラッラー師が非難するように、今回のブッシュ大統領の中東訪問は、アラブへのブラック・メールであったろう。

 ナスラッラー師は、ブッシュ大統領が湾岸諸国を訪問した折、イランの核問題に触れず、テロ支援国家とだけしか言及できなかったと指摘している。それは、ブッシュ大統領の湾岸諸国に対する、配慮からであったと思われる。

 つまり、湾岸諸国はどの国も、ブッシュ大統領がイランを軍事攻撃すると言っても支持する国はなく、経済制裁の強化についても、必ずしも賛同を得られないからであろう。

 ブッシュ大統領の湾岸訪問では、鷹狩りの写真が目立ったが、他方、フランスのサルコジ大統領は、核施設取引の話をし、好転しているようだ。どうやら今回のブッシュ大統領の中東訪問は、成果なしということではないのか。

もちろん、ブッシュ大統領がアメリカの大統領選挙を前に、イスラエル支持の立場を伝え、共和党候補への選挙資金支援を、取り付けに来たのであれば話は全く別だが。