クルド地区とトルコの深い関りと未来

2008年1月10日

トルコのビジネスマンが、イラク北部クルド地区でビジネスを展開していることは、これまで何度もこのコーナーでご紹介している。1000社を超えるトルコ企業が、クルド地区でビジネスを展開しているのだ。

インフラの建設から食料、薬品、教材、事務用品に日用雑貨と、何でもトルコから入っているのだ。このためトルコのトラック・ドライバーは大忙しで行きはトルコ製品を、帰りはクルド地区から安い油を買って、それをトルコ国内で何倍もの値段で売って利益を得ている。

 トルコ企業、なかでもクルド地区に隣接する、トルコ東部のビジネスマンやトルコ国籍のクルド人は、いま非常に恵まれた環境にいるのだ。たとえば、トルコ東部で働く、建設作業員の月給は350ドル程度なのだが、イラク北部のクルド地区で働くと、2000ドル貰えるというのだ。  彼らトルコのクルド人は言葉も習慣も、あまりイラクのクルド人と変わらないために、ビジネスマンにとっては重宝な存在なのだ。

 結果的に、トルコの建設会社は、今後20年間で200億ドルのインフラ事業を受注できる可能性がある、ということだ。ちなみに、昨年2007年には、40億ドルのインフラ工事を請け負っているのだ。  もちろん、この状況を見ている西側企業は、何とかクルド地区のインフラ工事に自分たちも参加しようと、トルコ企業との共同受注を狙っているようだ。しかし、そう簡単には行くまい。ほとんどの工事が、トルコ企業独自で出来るからだ。

 トルコのビジネスマンにもリスクはある。それはクルド人との取引で、商品は届けたものの、支払いが滞ったり、全く支払いが行われない場合もあるのだ。その解決は、クルド自治政府ではまだ、完全には監視できていないようだ。  前述のトラック・ドライバーも儲けは大きいが、殺害される場合もあり、まさにクルド地区とのビジネスは、ハイリスク・ハイリターンのビジネス・チャンスということであろうか。

しかし、トルコ人は勇敢であり、この程度のことでは、全くひるまないようだ。日本は社員の安全第一と、企業幹部の責任逃れから、当分キルクークがビジネスの黄金地帯でも、入ってはいけまい。 イラク北部のクルド地区の開発ブームは、結果的にトルコ東部のクルド人たちに、就職の機会を増やし収入を増やすことから、将来的には反トルコ政府の活動が停滞して行き、沈静化していくということであろう。

またイラクのクルド地区は、トルコとの深いかかわりの中でしか、発展していき難いということを実感するであろう。