アメリカのブッシュ大統領が、1月にイスラエルを訪問することになっているが、出発前の現段階から評価はいたって芳しくない。イスラエル人の中には「ブッシュ大統領は全く問題を理解していない】と語る者もいる。
同じように、アラブ側でも悲観的 な予測をする者が多い。アラブ連盟の事務総長アムル・ムーサ氏は、現段階で入植が拡大しており、安全の壁が現存しており、境界線が変更され、人口が移動し ており、しかも、東エルサレム地域の入植が拡大しているなかでは、和平の進展に期待は持てないと語った。
彼は、「ブッシュ大統領の訪問で何 が出てくるか静観するしかない」と延べ、「アラブ側はあくまでも、あらゆる可能性に対して門戸を開く立場を維持するだけだ」、と語っている。こうした発言 からは、アラブ側にはブッシュ大統領の訪問に対する、期待がほとんど皆無であることが伺えよう。
湾岸諸国も、ブッシュ大統領が取るイランに対する強硬姿勢について、全く賛成する気配はない。先月ブッシュ大統領が、イランへの対応で賛同を求めるべく、湾岸4カ国を歴訪したが、どの国の反応も「ノー」だった。
湾岸諸国は、もしイランとアメリカの戦いが始まれば、自国がイランによって攻撃される危険を、十分に認識しているからだ。
こうした雰囲気から、アラブ諸国と大衆は、ブッシュ大統領のイスラエル訪問を、単なる卒業旅行とみなしているようだ。パレスチナのハマースを代表するイスマイル・ハニヤ氏などは、「ブッシュは記念写真を撮りに来るだけだ、」と全く期待も評価もしていない。
パレスチナ問題が前進するために は、イスラエルに対しても苦言を呈することが出来なければなるまいし、自国が本格的に関与する姿勢で無ければなるまい。現段階で唯一期待できるのは、イス ラエルのペレス大統領が、トルコを訪問した折に合意した、西岸地区に産業地帯を建設する計画であろう。
トルコの企業が西岸地区に進出するには、イスラエルが製品の輸出を認めなければならないからだ。そうなれば、パレスチナの生活状況は改善され、今とは違った状況が生まれてくることが期待される。地域のことは、地域の国々で解決するのが、一番いいのではないのか。
そういう形ではない日本の援助は、一瞬にしてパレスチナ自治政府幹部の間で、分配され敵得るのだ、ということを正面から受け止めるべきであろう。パレスチナに対する日本の援助は、ほとんどパレスチナ大衆には、役立ってはいないのだから。
なお、ブッシュ大統領のイスラエ ル・パレスチナ訪問を、あえてイスラエル訪問と書いたのは、彼がアラファト議長の墓を詣でない、ということに起因している。常識には無い非礼であろう。ま たそれなしには、パレスチナを訪問するとは言えまい。あるいはブッシュ大統領が常々口にする、臆病からなのであろうか。