M・バルグーテイ釈放案が急浮上

2008年1月 6日

 現在、イスラエルの刑務所に収監されている、パレスチナ解放運動の闘士マルワーン・バルグーテイの釈放を、イスラエルの閣僚が口にし始めている。これはイスラエル内部の、大きな変化といえそうだ。  これまで、イスラエル政府は手が血で汚れている者(イスラエル人の殺害にかかわった者)の釈放はありえないとして、マルワーン・バルグーテイなどの釈放は、いかなる条件でもありえないとしてきた。

 しかし、ここに来て国防副大臣のマタン・ヴィルナイが、現在、パレスチナ側の捕虜になっている、イスラエル兵ギラド・シャリトの釈放と交換に、マルワーン・バルグーテイを釈放してもいいだろう、と言い始めている。  もちろん、これはあくまでも彼個人の見解であって、イスラエル政府の意見ではないとしているが、いずれにしろ、マルワーン・バルグーテイ釈放を条件付ながらも、話題にしたということは、見逃すべきではあるまい。

 このマタン・ヴィルナイ国防副大臣の意見を支持すると表明したのは、国家インフラ大臣のベニヤミン・ベン・エリエゼルだが、この発言に対し、バラク国防大臣の近い人物は、ベニヤミン・ベン・エリエゼルの意見は、バラク国防大臣の意見を表明したのではないと語っている。  そのことは、暗にバラク国防大臣も、囚人のパレスチナ解放運動の闘士マルワーン・バルグーテイと、捕虜のイスラエル兵ギラド・シャリトとの交換を、支持しているということではないか。

 そうでなければ、何の脈絡も無いように見える、ベニヤミン・ベン・エリエゼル国家インフラ大臣の発言に、バラク・サイドがコメントする必要はあるまい。もし、バラク国防大臣が交換に反対ならば、国防副大臣の発言に対して、述べるべきであろう。  では何故この時期に、マルワーン・バルグーテイ釈放の話題が出てきたのであろうか。もちろん、イスラエル兵ギラド・シャリトの救出は大事であろうが、そのためにマルワーン・バルグーテイを釈放することが、いまの段階で取りざたされるとは考えにくい。

 想像できることは、マハムード・アッバース議長に代わる、パレスチナのスーパー・スターの登場を、イスラエルは考え始めているのではないか、ということだ。現状では、マハムード・アッバース議長にはルビコンを渡るだけの、決断は出来そうにない。  そうであれば、イスラエルとパレスチナとの関係は、こう着状態を続け、次第にパレスチナ大衆の不満は高まり、ファタハに代わりハマースへの支持が増大し、遂には、イスラエルやアメリカが考えているような、ファタハを交渉の中心に据えた和平路線は、完全に崩れてしまう危険性があるからであろう。

 あるいは、このマルワーン・バルグーテイ釈放の話は、マハムード・アッバース議長に対して、決断を促す圧力なのかもしれない。