混乱が見え始めたイスラエル内部

2008年1月 3日

イスラエルの右派のラビ(宗教者)が、オルメルトを殺せと発言した。しかも彼だけではなく、副首相のハイム・ラモンやツイヴィ・リブニ、エフド・バラクまでもだ。

 この発言を集会の中でしたのはドブ・オルペであり、この集会にはクネセト議員や、キリヤト・アルバのヘブロン地区ラビなども参加していた。

 このラビは、オルメルト首相がナチと同じ連中に武器を与え資金を与えている、と非難している。ナチと同列の連中に支援するオルメルト首相という表現は、多分イスラエルの社会では最悪の言葉であろう。

 この言葉を受けて、オルメルト首相は怖気づくのか、敢然として立ち向かうのかが、まさに問われていよう。彼にとって2008年という年は、命がけの年になるかもしれない。

 ガザからメッカ巡礼に行ったパレスチナ人たちを、再度ガザに入れさせないという、全く常識外の対応をし、そのことでエジプトとの関係を、悪化させているオルメルト政権は、大分ふらついているようだ。いまイスラエルにはそんな余裕はないはずなのだが。

 イスラエル国民の、しかも宗教家の間から、ここまで厳しい意見が出てくるということは、オルメルト暗殺が現実のものになってきていることを、十分に感じさせる。ラビン首相が殺されたのも、宗教右派の指導者の意見に従って、若者が暗殺を実行しているからだ。

 しかし、だからといって、ここでオルメルト首相が怖気づいてしり込みしたのでは、何事も前進すまい。それよりも、ラビン首相の死や、シャロン首相の挫折を無駄にすることになろう。

 歴史を変えるときは、誰かが死を覚悟するくらいで無ければなるまい。それはマハムード・アッバース議長の場合も同じであろう。外国からの援助を集めることに、神経のほとんどを使っているようでは、何事も前進すまい。その結果は、パレスチナ人同士の殺し合いという体たらくだ。

 そうした状況は、最悪の事態につながることを、忘れるべきではあるまい。残念だが、いま待たれるのは、オルメルト首相とマハムード・アッバース議長の、後継者となるにふさわしい人物の登場かもしれない。