イスラエルはヘズブラ戦争で敗北した

2007年12月30日

 昨年夏に起こった、イスラエルとレバノンのヘズブラとの戦争は、われわれが考えていたよりも、イスラエル国民に大きなショックを与えたようだ。
 戦争、攻撃による破壊の程度、あるいは金額で計算した場合は、イスラエルの勝利ということになる。それだけレバノンは大きなダメージを受けていた。レバノンのインフラは広範囲にわたって破壊され、その修復には膨大な資金が必要となった。

 しかし、戦争の勝敗は人的被害や、インフラの破壊だけではないのだ。その戦争によって、国民がどのような精神的心理的ダメージを、どの程度受けたかということが、一番大きな判断材料になるのではないだろうか。
以前にも書いたが、ヘズブラとの戦争後、イスラエルの軍や政府の要人は、押しなべて自分の責任から逃れようとしたし、その後には、要人のスキャンダルが次から次へと暴露されもした。

 結果的に、イスラエル国民は政府と軍人を信用できなくなり、イスラエルという国家に対し、幻滅を感じたようだ。その責任を糊塗するのが目的だったのか、イスラエル政府はアメリカのアナポリスで開催された、パレスチナとの和平会議で、イスラエルがユダヤ人の国家であることを強調した。
 しかし、イスラエルのユダヤ国民の多くは、そのようなことではごまかされなかった。シオニズムがもう時代遅れになったからといって、ユダヤの国家だとイスラエルが主張することは、かえってイスラエルに対する、外国からの批判を強くしたのだ。

 世界の批判がイスラエルに向けられるようになっているなかで、イスラエルのユダヤ人国民は、イスラエル国家が嫌いになり始め、能力や金を持つ者は、アメリカへの移住を熱望するようになった。
 そうしたなかで行われた世論調査によれば、イスラエル青年の35パーセントが外国への移住を希望しているということだ。そして青年層でイスラエルの主要な政治家を信頼できると答えたのは、わずかに11パーセントであり、多少信頼できると答えたのが34パーセント、54パーセントの若者が全く信頼できないと答えたということだ。 

 イスラエル政府について、41パーセントの若者が外国の政府よりも壊れている(劣悪)と答えている。イスラエルへの移住者の数は、2007年には前年比で6パーセント減少し、過去20年間で最低の移住者数となっているのだ。

 イスラエル政府は、こうした国民の若年層から下された厳しい批判のなかで、どのように信頼を回復していくのだろうか。それには和平を真剣に進めるという正当な方法を選択するのか、あるいは国民に不安を抱かせることで、国民の政府への批判をそらすために、イランやシリアなどとの、戦争状態を生み出すのであろうか。前者の選択をイスラエル政府がすることを望むばかりだ。