中東大改造の予測

2007年12月22日

 ブッシュ大統領が任期最後の年を迎える2008年には、中東で大きな変化が生まれるものと思われる。それは、ブッシュ大統領が彼の大統領就任期間を通じて行ってきたことの、集大成とでも言うべきものであろう。

 一見ばかげた行動と思われていた、ブッシュ政権の中東対応の結果、中東地域は大きな不安定と混乱に直面している。あらゆる種類の可能性と推測が語られているが、そのひとつも確実なものではない。

 それらの不確かな想像される未来は、イラクの分割、クルド国家の設立、イラン攻撃、中東新地図、サウジアラビアの不安定、イスラーム原理主義者たちによる中東諸国体制の打倒、中東の民主化、パレスチナ問題の解決などといったものだ。  これらの可能性について考えるとき、個別には実現が不可能だと思われることも、そのいずれかといずれかが結びつき、形を変えて現実のものとなる可能性があることは否定できない。

 新中東地図だが、第一にこれはクルド国家の設立という可能性と絡んでいる。イラク国内情勢が混沌とするなかで、クルド地域だけは安定と発展を得て来ている。そのことから、クルド地区は既に、イラクから分離独立したも同然だ、とする考え方があろう。  しかし、それはイラク国内のシーア派やスンニー派から、強烈な反発を受けることが予測され、現段階でそうした状況が発生していないのは、あくまでもアメリカ軍がロジステックの必要から、クルドに対し保護を行っているからに過ぎないのではないか。

 もし、将来クルド民族が独立しようと思うのであれば、アメリカに代わる保護者を必要としよう。それは隣接するトルコということになるのではないか。クルド国家が独立宣言をし、即座にトルコとの連邦国家宣言をするのであれば、クルドはイラクから離脱することが可能なのかもしれない。  イラン攻撃については、結果的に尻すぼみの状況になってきているが、湾岸諸国はいまだに安心しているわけではない。湾岸諸国には多数のイラン人が居住しているし、アラブ人でもシーア派の国民が多数いる。

 彼らが政治的な行動を起こしてくる危険性は、常にあるのだ。実際にバハレーンではシーア派の若者たちが、警察と衝突事件を起こしているのだ。そうした状況はサウジアラビアにもある。今年のハッジ期簡には、イスラーム原理主義者によるテロが起こされようとしていたが、サウジアラビア警察が未然に防いでいる。 サウジアラビア国内外には、多数のサウジアラビア人原理主義者がいるのだ。彼らはイラクやアフガニスタンなどの入り込みイスラーム原理主義の義勇兵として戦っているのだ。彼がサウジアラビアに帰還し、自国体制に対して戦いを挑んだことは過去に何度もあるのだ。

 中東最大の問題とされるパレスチナ問題は、アナポリスの和平会議でうやむやな結論ともいえない結論を出したようだが、実際には非常に明確な将来図を示している。それは「イスラエルがユダヤ国家になる」ということだ。  つまり、イスラエル領土にはアラブ人(パレスチナ人)は、住めなくなるということだ。やがては、イスラエル国内のパレスチナ人が、イスラエル国外に追放され、いかばかりかの狭い土地に創られるパレスチナ国家なる地域に、移動させられることになろう。

 このパレスチナ国家の領土は、イスラエルが必要な部分を切り取った残りの地域、ということになろう。もちろん、そこにはレバノンやシリア、ヨルダンなどに居住するパレスチナ人は帰還できなくなろう。それはイスラエルの意向であると同時に、パレスチナ政府の都合でもあろう。何百万の難民を受け入れ、それに対応する能力はパレスチナ政府には無いと思われるからだ。   そうなれば、イスラエルの周辺に居住するパレスチナ人は、現在居しているアラブ各国の国籍を取得して定着するか、他の国に移住するか、の選択をせざるを得なくなろう。もちろん、アラブ諸国はそれを受け入れさせられる、ということだ。

そして、欧州やカナダなどが、残りのパレスチナ難民を受け入れることになろう。欧州諸国では若年層が減少し、社会サービスに従事する者が減少していくため、パレスチナ難民の受け入れは好都合なのであろう。  こうした国境問題やパレスチナ難民問題、各国の体制安定の問題に加え、中東地域では、エネルギーと水の移動の自由も確保されることになろう。中央アジアやロシアのガス、石油、湾岸のガス、石油が地中海側と、インド洋側に抜けるルート、イスラエルに流れるルートが建設されていこう。

 このガスや水、石油の新しい流れを造っていくためには、幾つかの国々がこの構想を受け入れなければなるまい。もし拒否すれば、その国は壊滅的な軍事攻撃、あるいは経済制裁を受けるということだ。  現在この新しいガス、石油、水の流れの障害となっている国は、シリア、レバノン、イランであろう。シリアはイラクの石油が流れ込み始めるが、トルコから流す石油、ガス、水の流れについては、いまだにめどが立っていない。この流れはイスラエルやパレスチナ、ヨルダン、そして一部サウジアラビアまで到達するものであろう。それをシリアが受け入れるか否かであろう。レバノンはシリアやイランの変貌に追従する形になろう。

 イランは中央アジアの石油、ガスが、インド洋に抜けるルートを、欧米諸国に提供するか否かだ。もちろん、その上では、イランが欧米諸国にとって、信頼するに値する国家であるか否かが問われることになろう。イランは早晩、欧米にとって信頼に値する国家に変わっていこう。  こうした予測は、来年1年間ですべてが実現するとは思わない。しかし、これから数年間の期間には、実現するものが幾つか出てこよう。まさに中東地域全体が、大きく変貌していくということなのだが、それをどこまで正確に予測し、日本は対応していけるのか、ということが日本の将来を決定付けるのではないか