ムバーラク大統領・危険物はガザへ

2007年12月18日

 いまパレスチナ自治政府とエジプト政府との間に、緊張状態が発生しているようだ。  エルサレムポストの伝えるところによれば、この両者の緊張は、シナイ半島からガザ地区のハマースに、武器が密輸されていることを、エジプト政府が放置していることに起因するというのだ。

 ハマース側に言わせると、そもそもシナイ半島からガザ地区に武器が密輸されているのは、ファタハ(M・アッバース議長の所属する組織)がパレスチナの部族の一部にそれを許してきたことであり、ハマースとは何ら関係ないということだ。  このシナイ半島経由ガザへの武器の密輸には、シナイ半島に居住するパレスチナ人やベドウイン、エジプト軍の一部、兵士、密輸業者などが絡んでいるということだ。

シナイ半島の観光地では、これまで何度となくシナイ半島に居住するベドウインやテロリストたちによる、テロ事件が発生し、観光事業がダメージを受けてきている。  問題はこの火器の密輸について、エジプト政府は独自の判断をしているということだ。つまり、積極的に取り締まるよりも、シナイ半島をはじめとするエジプト国内にある武器が、ガザに密輸されたほうが、エジプト国内の治安は安全度を増すというのだ。

 エジプト国内には、ムスリム同胞団やアルカーイダといった反体制組織が存在し、彼らは大量の火器爆発物を隠匿していると思われているからだ。したがって、シナイ半島のベドウインが持っている火器も、カイロなど都市部に隠匿されてある武器も、ガザに売り飛ばして無くなったほうが、エジプト国内は安全になるというのだ。  しかも、ガザ地区にはエジプトの警察軍の逮捕から逃れて、逃げ込んだムスリム同胞団のテロリストたちが、イスラエル人の出て行った入植地を、軍事トレーニングキャンプに使い、軍事訓練をしているということだ。

 問題はエジプトから逃れた彼らが、やがてエジプトに戻ってきて、反体制テロを始める危険性があるということだ。ガザへのシナイ半島経由の火器の密輸は、確かに当分の間はエジプト国内治安上、好都合な話かもしれないが、将来を考えると喜んでばかりはいられまい。  そもそも、アルカーイダのメンバーになったテロリストたちの多くは、エジプトをはじめとするアラブ各国政府が、反体制思想を持っていた彼らを、危険だとして国外追放を目的とし、出国を黙認してアフガニスタンのゲリラ戦に参加させたの。彼らはその後、アフガニスタンで戦闘でソ連軍に勝利すると、矛先をアラブ各国の体制に向けるようになったのだ。

 ムバーラク大統領はパレスチナ自治政府やイスラエル政府にとって迷惑な、火器の処理ではない、テロリストや火器の管理を本格的に始める必要があるのではないか。