PKKの拠点ナゴルノ・カラバフに移転か

2007年12月 3日

 トルコ政府によるPKKに対する、軍事外交両面からの圧力が、効を奏し始めているようだ。述べるまでもなく、クルド自治政府もイラク政府も、PKKに対して、武器を捨てること、イラク国内の拠点から去るよう説得したのだ。

 裏でPKKを支えていたと思われるアメリカ、この段階になると、とてもトルコとPKKを交換できないということからか、トルコに対しPKKの動向を即日伝えるようになっている。

 イランとトルコとの関係が現在改善されているが、双方がクルド・ゲリラの情報を交換し始めていることも、PKKやPJAKにとって痛手であろう。  これではトルコ側の軍事攻撃が効果を発揮し、PKKは大きな痛手をこうむることになる。しかも、PKKの戦闘員が負傷しても、イラクの病院は治療を拒否し、事務所も閉鎖させられ、食料や武器弾薬の補充も出来なくなっている。

 アメリカやイラク政府、クルド自治政府だけではなく、盟友のPJAKまでもが、PKKとの協力関係を拒否し始めている。 PJAKはPKKと同じ目的を持つ、クルドのイランに対する分離独立派だが、これまでアメリカの支援を受けていた。もし、今後、PJAKがPKKとの連帯関係を維持していけば、アメリカの支援が受けられなくなる、という不安からであろう。

 窮地に立ったPKKは現在、アルメニアが占領しているアゼルバイジャン領のナゴルノ・カラバフ(アゼルバイジャンの飛び地で、1993年以来アルメニアが占領を続けている地域)に移動し始めているようだ。アルメニアとアゼルバイジャンとの争いに対し、トルコがアゼルバイジャン側を支持していることから、アルメニアはPKKを巻き込み、バッファーゾーンを設けようということかもしれない。  しかも、アルメニアにはクルド人の村落が10箇所あることから、PKKは彼らの協力を得ようと説得し始めているようだ。

 問題はこのPKKにとって最後の逃げ場であるアルメニアが、どこまでPKKを匿うことが出来るのかということだ。アルメニアと敵対関係にあるアゼルバイジャンは、アメリカのイラン攻勢上で、最も強力な同盟関係にある国のひとつでもあることから、早晩、アメリカからアルメニアに対し、圧力がかかるのではないかと思われるからだ。  もし、PKKがアルメニアの黙認の下に、国境のクルド村落に隠れ住むことが出来るのであれば、現段階においては最も幸運な状態、ということではないのか。