シリアの変貌―推測に過ぎないが

2007年12月 3日

 最近になって、シリアにはこれまでとは全く異なる、新た動きが目立つような気がする。  まずあげられるのが、アメリカ主導の中東和平会議、アナポリス会議へのシリアの参加だ。この会議からは、何も目新しいものは出てこないだろうと、当初から予測されており、シリアは反対の立場を表明していたにもかかわらず参加したのだ。

 しかし、結果的にはゴラン問題も議題に取り上げられるということで参加した、とシリア政府は参加の理由を述べている。では、アナポリス会議からゴラン問題について、何が出てきたのかといえば、何も出てきていない。  シリア参加の理由は、トルコの説得によるだろうという推測はすでに書いたが、それだけであろうか。もちろん、アナポリス会議に参加することによって、シリアが平和を求めている、という立場を示すことは出来た(?)ろうし、アメリカが説得して、イスラエルがシリアに対し、突然軍事攻撃することも無くなろう。

 だいぶ前に書いたのだが、今中東地域ではトルコを中心として、全く新しい動きが始まっているのではないかと思える。それは、トルコが水、エネルギー、電力のハブ国家となり、イスラエルやヨルダン、シリアに供給するという形をベースにしている。  この計画にシリアが参加すれば、シリアはイスラエルと同じように、メリットを受けることになろう。トルコから伸びるこれらのパイプ・ラインが、北キプロスを経由してシリアのラタキアに上陸し、イスラエルまで伸びるとなれば、シリアはイスラエルと運命共同体関係になるということだ。

 もしこの推測が正しければ、ゴラン高原のイスラエルからシリアへの返還は、実現する可能性が高くなろう。もともと、イスラエルがゴラン高原を占領して現在に至る理由は、軍事戦略的なこともあるが、水資源にあるといわれてきているからだ。  他方、パレスチナはといえば、もし、パレスチナが単独で国家になったとしても、何も自力では出来まい。イスラエルの一部としてのみ、パレスチナ国家は成立しうるのだ。これまでも何度となく、パレスチナ国家が出来上がるためには、パレスチナ国家設立宣言と間髪をいれず、ヨルダンとの連邦国家にする必要がある、といわれてきたことからも分かろう。

 つまるところ、シリアもパレスチナも、イスラエルとの良好な関係を抜きにしては、存在そのものが危ぶまれるということであろうか。シリアやパレスチナのイスラエルとの仲介役はトルコしかあるまい。