イラク大統領PKK投降の可能性示唆

2007年12月29日

 先週から始まったトルコ空軍の猛空爆に加え、地上からのトルコ軍特殊部隊による攻撃で、イラクのクルド地域に潜伏するPKKは、苦しい状況に追い込まれているようだ。

 PKKにとって苦しいのは、トルコ軍の空爆や陸上からの攻撃で、ダメージを受けていることに加え、頼みの綱のクルド自治政府や、タラバーニ大統領(クルド人)をはじめとするイラク政府の中のクルド人高官が、PKKを表面的にも裏でも、支援してくれなくなったことであろう。

 アメリカも今回のトルコ軍のPKKに対する攻勢では、全くトルコを非難しないばかりか、全面的に協力する状態にある。PKKが潜伏するクルド地域の拠点と、PKKの動きを逐一トルコ側に伝えてさえいるのだ。

 こうした状況下にあるため、PKKの側から、トルコとの妥協を模索する動きが始まった。イラクのタラバーニ大統領は「トルコ側が投降したPKKの戦闘員を投獄しないのであれば、彼らは武器を捨てる用意がある。」と伝えた。
 もちろん、これまでの戦闘に参加し、トルコの軍人や民間人に対して、危害を加えたPKKメンバーは、この範疇には入らない。あくまでも、戦闘に参加していない者と、PKKについてクルド地域に入り込んだ、非戦闘員ということであろう。

 PKK側は、武器はトルコ軍側ではなく、アメリカ軍に引き渡したい、とまで踏み込んだ立場を伝えている。
 戦闘員やPKKの幹部で、トルコに戻れば投獄されるメンバーたちは、第三国への移動が検討されており、それ以外の人々は、トルコに戻って平穏な生活をさせて欲しい、というのがタラバーニ大統領の、トルコ側へのメッセージだ。

 タラバーニ大統領にしてみれば、イラクに隣接する軍事大国のトルコに対して、PKKをかばうための戦争をするつもりはないし、トルコ側の攻撃がこれ以上拡大することも望まない。彼が語るように「PKK問題はトルコにとってもイラクにとっても迷惑だ。」ということになるのであろう
 せっかくいままで再建してきたクルド地域のインフラを、トルコ軍によって空爆されたのでは、元も子もなくなるということであろう、それはトルコ側も同じであろう。大きなビジネス・チャンスのあるクルド地域を、敵にしたくはないという気持ちであろう。

 どうやら、PKK問題は活動が始まってから20数年で、やっと沈静化の時を迎えるのであろうか。そうあってほしいものだ。
 最近になってトルコの新聞もPKKのメンバーの半数以上が25歳以下であり10代の少年たちも含まれていると報じ、彼らを許す気持ちがあることを暗に伝えている。(トルコ国家治安警察テロ対策部の発表によれは、PKKメンバーの54%が14-25歳、34%が26-37歳、12%が38-58歳)