トルコ軍のPKK拠点空爆と米・イラクの対応

2007年12月29日

 トルコの空軍がイラクのクルド地域にあるPKK拠点を、先週から空爆しているが、トルコに対するイラク政府やアメリカ政府の反応は、いたって好意的と言えそうだ。 

 ブッシュ大統領はトルコの空爆を是認し、トルコとアメリカ、イラク政府は、協力してPKKに対応する必要があると語っている。唯一、トルコ軍の空爆に対しクレームをつけているのは、クルド自治政府のバルザーニ議長だが、これも余り力が入ったクレームとは言えそうに無い。

 バルザーニ議長は、トルコ軍が空爆しているのは農村の集落だ、と語っているが、トルコはアメリカの提供した情報に沿って攻撃をしているのだ、と反論している。
つまり、空爆地域がクルドの民間人居住地域であるとするならば、それはアメリカの提供した情報が不正確であり、トルコではなくアメリカ側に責任があるのだから、バルザーニのクレームは、アメリカに向けられるべきものだ、ということであろう。

ホワイトハウスはトルコのエルドアン首相と、アメリカのブッシュ大統領との間で、頻繁に電話会談が行われ、トルコ軍は両国の合意に基づいて、PKK攻撃を継続していることを裏付けている。そのことは、アメリカのNSCのスポークスマンも認めている。
ブッシュ大統領がここまでトルコを支持するのは、トルコの地域における役割が拡大してきていることを、同大統領が十分に認識しているからであろう。トルコはNATO最東端のメンバー国であることに加え、イラク駐留のアメリカ軍にとって、最も依存度の高いロジステック・ルートでもある。
加えて、昨今のロシアの中央アジア諸国や中東諸国への台頭に、アメリカ政府は危機感を抱いているからでもあろう。その最も顕著な例は、ロシアのイランに対する核開発協力であろう。

そうしたアメリカのトルコに対する評価の変化が、フォーリン・アフェアーズの誌面に、F・ステイーブン・ラビビ氏の「中東の外交プレーヤーとしてのトルコに注目せよ・クルド人権問題と中東秩序の再編」(朝日総研リポート07・11)なる論文を掲載させたのであろう。