イランの　A･ネジャド大統領は、サウジアラビアのアブドッラー国王から、ハッジへの招待を受けたことがBBCで報じられている。
　このニュースは裏に、複雑なサウジアラビアとイランとの事情が隠されているのではないか。これまでスンニー派のワハビー学派を採るサウジアラビア政府は、シーア派のイランとの間に、厳然とした宗派的壁が存在していた。

　今回その宗派的壁を乗り越えて、アブドッラー国王がA･ネジャド大統領を招待したということは、深い意味があろう。
１２年前には、ハッジのさなかに政治的活動をしたことで、イラン人ハッジャージ（ハッジ参加者）がサウジアラビア警察の対応で、４００人ほどが死亡するという、悲惨な出来事があった。そうしたこともあり、これまでサウジアラビア政府は、イランの大統領をハッジに招待することは無かった。

イランはアメリカがテロ国家と指定し、明日にでも軍事攻撃が起こる緊張した状況にもある。そうしたなかでのことだけに、サウジアラビア政府はこの招待で、サウジアラビアとイランとの間に、しかるべき成果を挙げることを考えているのであろう。
最近になって、サウジアラビア政府はアメリアとの間に距離を置き、独自の外交を展開し始めているといわれている。ロシアへの接近がそれであろうし、トルコとの関係拡大もそのひとつであろう。

サウジアラビアのアブドッラー国王が今回、A･ネジャド大統領をハッジに招待したのは、アメリカがイランを攻撃しないだろう、という判断に基づいているのではないか。
若し、アメリカがイランを軍事攻撃しなければ、おのずからイランの湾岸地域における存在は大きくなろう。その前に、サウジアラビアは独自の外交を展開することで、イランとの緊張を緩和しようということかもしれない。

先に、カタールのドーハで開催された湾岸首脳会議にも、A･ネジャド大統領は招待されていたが、湾岸諸国はサウジアラビアを筆頭に、イランとの新しい関係を模索し始めているのであろう。