豹変したシリア、イランとも距離

2007年11月30日

 散々にアナポリスで開催される中東和平会議をけなしていたシリアが、最後の段階で参加を決めたが、会議が終わった後は、会議に出席することが重大だったと強調している。

 シリアの政府紙とも言えるテシュリーン紙は「この会議が失敗すればアラブだけではなく、世界にとって危険な状態が発生することが予想された」「シリアが平和を望む国家であることを世界にアピールしたかった」「アラブの奪われた土地を取り戻すことを真剣に考えた」「アラブのコンセンサスを崩したくなかった、」「アメリカの誠意を試したかった】といった内容で、シリアの出席したことを正当化しながら、他方ではイスラエルとアメリカに対する、いままでと同じように非難を繰り返している。

 しかし、イスラエルやアメリカ対する非難は、あくまでも形式的なものに過ぎないのではないか。シリアがアナポリス会議に出席したのは、トルコやエジプトの説得によろう。それは説得といえば聞こえがいいが、実は脅しに近かったのではないかと思われる。  トルコとエジプトは、アナポリスの和平会議に出席さえすれば、アメリカがイスラエルに対して、シリア攻撃を思いとどまらせる、と説明したのではないかと思われる。

 問題はこれだけではない。脅しはイランに対しても行われたものと思われる。アメリカ政府はアラブ諸国の代表を、個別にブッシュ大統領に会わせ、ブッシュ大統領がイラン攻撃をすることを、アラブ諸国に飲ませたという情報も流れているからだ。  シリアは今回のアナポリス会議に出席したあと、シリアの首都ダマスカスに拠点を置くパレスチナ各派に対し、イランの招待でテヘランを訪問することを止めたようだ。

 ダマスカスに拠点を置くパレスチナ各派が、スポンサーであるイランの招待を断ったということは、シリアが止めたということ以外に、納得の行く理由が浮かんでこないからだ。  イランはこうしたシリアの豹変に驚いているようだ。同時に、それはイランにとって危険の度合いが増したということでもあろう。今回訪問したエジプトやドバイ(アラブ首長国連邦)でのアラブ人との会話の中では、押しなべてアメリカのイラン攻撃が話題に上り、ほとんど全員が「近い将来あるだろう」と語っていた。このことについては後日報告することにする。