動き始めた中東大国間の結束?

2007年11月30日

 イギリスが作り上げたアラブ世界でのトルコのイメージは、傲慢で残虐な支配者、占領者であった。

そのイメージに縛られ、オスマン帝国の崩壊以来今日まで、トルコはアラブ世界との関係がスムーズなものにはなっていかった。トルコは中東問題の核心から常に除外されてきていたのだ。

 しかし、そのことは大きな負の効果をアラブ世界に生み出してきていた。アラブ諸国はこれまで、パレスチナ問題の解決のために4度の戦争を行い、多くの犠牲を生み出してきたが、さしたる成果を得ることはできなかった。

 イスラエルによるパレスチナの占領地は拡大し、現状でのパレスチナの独立が達成されたとしても、パレスチナ人が得る土地は極めて限られた範囲にとどまろう。
アフガニスタンやイラクに対するアメリカとイギリスの攻撃は、民主化という大義が掲げられたにもかかわらず、その犠牲は甚大なものであった。その実態を前にアラブ諸国は、イギリスのプロパガンダがいかに偽りに満ちたものであるかに気がついたようだ。

 アラブ諸国はこうした情況のなかで、トルコに対する評価を改め始めた。アラブ諸国の首脳が2003年1月に、トルコのイスタンブールに集結したのがその始まりであったと思われる。トルコはアメリカ軍のイラク侵攻に当たって、アメリカ軍の港と軍事空港の使用を認めなかった。そのことが益々アラブ諸国のトルコに対する認識を改めさせた。

 そして今、アメリカとイギリスがイランに対して、イラクにとったと同じ手法をとろうとしているなかで、トルコに対する評価を改め、トルコに対する期待を抱くようになってきている。日本アラブ会議で会った多くのエジプト人外交官たちは、エジプトとトルコとの関係が急速に改善していることを隠さずに語った。

 さる7月にエジプト、イスラエル,トルコを訪問した際に、イスラエルの知人たちから、トルコによるシリアとの仲介を希望する意向を受け、トルコ側に伝えた。結果的にトルコはシリアとの良好な関係、イスラエルとの信頼関係を生かし、イスラエルとシリアの仲介に乗り出し、現在に至るまで両国間では、武力衝突といった情況は生まれていない。

 今回の場合も同様に、トルコを仲介者としてエジプト、トルコ、イランが協力関係を構築し強化していく可能性がある。
中東で最大の人口を有するこれらの国の間で、協力関係が実際的なものになっていったとき、中東の情況には大きな変化が生まれるものと思われる。すでに、トルコは経済面でエジプトとの協力を強化しているし、外交面でも協力が進みつつある。イランもまたトルコとの協力関係を構築している。11月22日にイランで開催される会議のなかで、エジプトとイランの協力が一層促進されるものと思われる。

 中東諸国はいま、イラクでの悲惨な経験を経ることにより,そしてイランの緊張を前に、大きな変化をしていく可能性がる。