イスラエル・パレスチナが産業地域設立合意

2007年11月15日

 トルコの仲介努力で、イスラエル政府とパレスチナ自治政府の間で、西岸地区に産業地域を設立することが合意された。あるいは、トルコも当事者であろう。つまり三者が合意したというのが、今回の合意の正しい表現であろう。

 合意内容はそれほど詳しくは報じられていないが、西岸地区二箇所に産業地域を設立し、そこに各種の工場を設立し5000人の雇用を生み出す、というものだ。

 5000人の雇用では焼け石に水のような感じがするのだが、三者はこれをキッカケにトルコ、イスラエル、パレスチナ以外の国々が、この産業地域設立計画に、参加してくることを期待しているのであろう。

 当然ことながら、それら外国の中で大きな期待を寄せられるのは、他ならぬ日本であろう。それは日本には高度な技術と資金が、あると思われているからだ。しかし、この計画に参加していく上で、日本政府はこれまでのような、金をやればいいという対応は許されまい。

 第一、パレスチナの西岸地区に進出し、工場を建てるのは日本政府ではなく、あくまでも民間企業なのだ。そうである以上、安全の確保ということが、一番最初に問題になってこよう。

 アラブに進出した企業が成功しているのは、現地政府がしっかりしていることが要求されるが、その点パレスチナ自治政府は、まだ政府などと呼べるレベルではない。政府の高官から下のクラスまで、合法非合法に日本企業からむしることを考えるだろう。それに対応でき、現地人を使いこなし、育成していけるだけの、強靭な精神力を持った日本人は、もう少なくなっているのではないのか。

 同時に、イスラエルは西岸地区で、仕事を増やしてやるだけのことは考えていない。何かにつけイスラエルの利益も考えるだろう。しかも、トルコもそれにかぶさってくるとなると、なおさら複雑なビジネス環境となろう。

 日本は金を出すだけで逃げ切れるのか、あるいは一部企業を人身御供に差し出すのかを、今のうちから考えておいたほうがいいだろう。安易な中東和平への貢献とか、国際貢献など口にすべきではあるまい。所詮、日本人は島国人種であり、そんなカッコイイ貢献なんかできないのだから。

 イスラエルとトルコとの関係がうまくいっているのは、イスラエルには3万人のユダヤ人が居住していて、それ以外にもドンメと呼ばれるユダヤ教から改宗したイスラム教徒がいるのだ。そのことに加え、トルコからイスラエルに移住したイスラエル・ユダヤ人が10万人以上いるのだ。

 パレスチナとトルコの関係でもトルコ・オリジンのパレスチナ人もいれ、トルコ人とアラブ人の混血のパレスチナ人もいるのだ。しかもトルコにはパレスチナ地域を支配していた歴史的経験もあるのだ。

 日本はやけどをしないように、いまのうちから、どうこの西岸の産業地帯に協力するかを、考えておいた方がいいのではないのか。