PKKがトルコ兵釈放、トルコの動きにブレーキか

2007年11月 4日

 2週間ほど前の戦闘時に、PKKの人質になったトルコ兵が釈放された。これはクルド自治政府が仲介にしたものだった。  このことは、今後のトルコとPKKとの関係、トルコとイラク政府との関係、トルコとクルド自治政府との関係に、微妙な影響を与えることになろう。

 まずトルコとPKKとの関係だが、これでトルコ側はPKKに対する攻撃を、緩和せざるを得なくなろう。そうでなければ、トルコはアメリカとヨーロッパ、イラクなどから非難されることになろう。 もちろんトルコ国内にも、多少の影響を及ぼそうが、トルコ人のPKKに対する怒りが、これで和らぐとは思えない。つまり、今度はトルコ政府が、守勢に回る可能性があるということだ。

トルコとイラク政府との関係には、どのような影響が及ぶことが推測されるのだろうか。多分、イラク政府はこれでトルコ政府に対し、「ある程度のことはしたのだから、何とかクルド地域への本格的な攻撃は控えて欲しい。」と頼みやすくなろう。 トルコ政府とクルド自治政府との関係では、これまでイラクが統一国家であり続けるために、トルコ政府はクルド自治政府を、交渉の相手にしてこなかったが、これからはイラク政府と共に、クルド自治政府も種々の交渉に、招待せざるを得なくなるのではないか。

 しかし、エルドアン首相のおかれた立場は、いまだに厳しいものの、これで何とか次の段階への、平和的な一歩が踏み出せるのではないか。 イスタンブールで開催されていた、G8と関係諸国の会議では、イラク政府が「 PKK指導者の摘発に協力する」と約束している。また、「イラク国内のPKKを含むあらゆるテロ活動を非難する」という声明も出している。

エルドアン首相にしてみれば、PKKを憎んではいるものの、本格的なイラクに対する軍事侵攻は、始めから望んではいなかったものと思われる。しかし、トルコ民間人と兵士の間に多数の犠牲が出たことから、トルコ国民が激高し、エルドアン首相は対応に苦慮していた、というのが本音であろう。 これで事態が緩やかにでも、解決、鎮静化の方向に進むことを望みたい。今回の緊張状態は、今後トルコが大国に復帰していく上での、非常に重要な試金石、ステップであると思われるからだ。トルコの文明力、外交力、政治力がまさに問われているのだ。成功を祈りたい。