開催前に失敗したライスの中東和平会議

2007年10月 5日

 ライス国務長官が進めようとしている、11月中旬開催予定の中東和平会議は、現在の段階で既に失敗が明らかになってきたようだ。

 アメリカ政府は、アラブ諸国が積極的に協力する意思がないと非難したが、それは何の成果も出ないことが、アラブ諸国の首脳たちには分かっているからであり、当然であろう。

 シリアはゴラン高原の返還について話し合わないのであれば、出席しても意味がないとバッシャール・アサド大統領自身が語っている。

 パレスチナのマハムード・アッバース議長も、和平交渉を進める意思があるように取り繕ってみたが、どうにもうまくいかなかったようだ。イスラエル側の立場には、何ら譲歩も変化も起こらなかったからだ。

 マハムード・アッバース議長は、イスラエルの入植地を認めるわけにはいかないし、パレスチナ難民の帰還権を放棄することも出来ない。

 結局、パレスチナの閣僚の一人が、和平会議後の6ヶ月をデッド・ラインにすれば、応じるという妥協案を出したが、これはアメリカに対する、リップ・サービスであり、この6ヶ月の期間に何らかの成果が出てくる、とは考えているわけではあるまい。

 パレスチナ側の考えでは、6ヵ月後には、イスラエルやアメリカではなく、パレスチナ大衆の側に変化が現れ、マハムード・アッバース議長に対する、非難が和らぐだろうという程度の話だ。

 イスラエル側はここに来て、マハムード・アッバース議長率いる、ファタハとハマースが話し合っていることを理由に、ファタハに対する信頼を置けなくなってきた、ということを言い出す閣僚も出てきている。

 つまり、パレスチナ側もイスラエル側も、責任のなすりあいの段階に、既に入ったということであろう。双方は、アメリカを向いているだけであり、パレスチナ・イスラエルが対面しているわけではない。

 ブッシュ大統領は、どんなことがあってもイスラエルを守る、と発言したが、それは初めから分かっていたことであり、会議が失敗に終わっても、イスラエルを非難することはない、と事前に宣言したのであろう。

 10月後半には、ライス国務長官が再度エジプトを訪問し、11月の半ばには中東和平会議が開催されようが、それらは何の意味もない動きだということが、現段階で既にアラブ各国首脳には明らかになっているのであろう。