ムバーラク大統領の過剰反応か?米のやりすぎか

2007年10月 3日

 アメリカはいままで、エジプトを中東和平推進のための、よきパートナーとして、良好な関係を維持することに、神経を使ってきた。エジプトに対するアメリカの経済援助も、このため世界でも、トップ・クラスの額に達していた。

 しかし、ここに来て、アメリカはその平和のためのグッド・パートナーを、批判し始めている。批判の主な理由は、エジプト政府が人権活動や、報道の自由を厳しく規制しているというものだ。

 確かに、最近ではムバーラク大統領の健康状態がよくない、という記事を掲載した、アッドストール誌の編集長イブラーヒーム・イッサ氏を裁判にかけている。 

その前には、シビル・ソサエテイ研究所を運営していた、カイロ・アメリカン大学のサアードッデーン・イブラーヒーム教授を、外国から資金を受け、未届けであったとし、裁判にかけ投獄するということも起こっていた。

サアードッデーン・イブラーヒーム教授の場合は、ムバーラク大統領の次男ガマール氏が、大統領職を後継する動きに対する、辛辣な批判が真の理由であった。

しかし、彼サアードッデーン・イブラーヒーム教授の妻が、アメリカ人であったことから、最終的には釈放されアメリカに渡ったが、現在の段階でエジプトに帰国すれば、逮捕され再度投獄されるだろうと自身で語っている。

こうしたことが再び起こらないために、ムバーラク大統領はエジプト国内のシビル・ソサエテイ運動に対し、新たな法律を設け、厳しく取り締まる方針だ。

そのことは逆に言えば、そのようなシビル・ソサエテイ活動が、最近になって再度復活してきている、ということであろう。たとえば、2-3年前に流行したキファーヤ運動(ムバーラク大統領はもうたくさん辞任しろという意味)などがそれだ。

今回のアメリカのエジプト批判に対し、ムバーラク大統領は敢然と拒否の立場を宣言しているが、それは最も痛いところを突かれたための、過剰反応かも知れない。 

また、こうした過剰ともいえる反応が、ムバーラク大統領から出ているということは、エジプト社会のなかで、大きなマグマが表面に近いところまで、迫っているのかもしれない。そのマグマを包む表皮に、アメリカは槍を突き刺そうとしているのではないか。