トルコのクルドへの制裁は効果的か?

2007年10月27日

 トルコ政府はクルド自治政府の、PKKに対する対応があまり協力的でないとして、経済制裁を検討している。もし、トルコがクルド地域に対する経済制裁を発動した場合、トルコの受けるダメージが大きいのか、クルドのほうが大きいのかということが気になる。

 述べるまでも無く、クルド地域は現在の段階では、完全にトルコに依存している、といっても過言ではあるまい。電力、食料、医薬品などすべてが、トルコから供給されているのだ。

 これらのトルコからの物資の輸送は、トラックで行われているが、昨年のトルコ・クルド国境を通過した車両の数は、824・659台だと報告されている。これは、トルコからクルド地域へ移動するものと、クルド地域からトルコに移動する両方の合計台数だ。

 現在、トルコからクルド地域に提供されているものは、消費物資ばかりではない。イラクの中では比較的安定していることから、クルド地域はいま復興ブームに沸いており、道路建設、官庁ビル、ビジネス用ビル、一般住宅、病院、学校と、すべてがトルコの建設業者によって行われているのだ。

 トルコ政府がクルド地域に対して、経済制裁を適用することになれば、これらすべてのトルコの企業は、クルド地域から撤退することになろう。したがって、トルコがクルド地域に果たす経済制裁は、巨額のマイナスをトルコにも、もたらすことになろう。国境で聴取される税金も、当然のことながら無くなるということでもあるのだ。

 しかし、クルド側も決して容易ではあるまい。電力供給が止ることは大きな痛手となろう。小型や中型の発電機を輸入しようとしても、その運搬にはトルコの港を使えないということになるわけだから、バスラやウンムカスルなど、イラク南部の港から運ばなければならないということになる。

 そうなれば、輸送の途中で略奪されたり、破損したりするリスクを覚悟しなければなるまい。また安全な輸送にはガードが必要となり、とんでもない高価な買い物となる可能性がある。

 トルコからの食料品や薬品の供給が止まることは、クルド自治政府と住民にパニックを起こすことになろう。ガソリンですらトルコから入っているのだ。これからの冬の季節になり、暖房用の燃料が必要になり、それがイラク国内でまかなえないのだ。

 もうひとつの物資の供給国はイランだが、これもPJAK(クルドフリーライフ)のテロ活動でイラン政府を激怒させ、イランとクルド地域の国境ゲートは、閉鎖されたり開かれたりという状態であり、スムーズにはいっていない。イランとトルコが、クルド地域に対する制裁に合意した場合、クルド自治政府はお手上げとなるものと思われる。

 つまり、トルコによるクルド地域に対する制裁は、トルコにとっても痛手だが、その何倍もクルド自治政府にとって痛手となるということだ。トルコによる制裁は、クルド地域だけではなく、他のイラクの地域や、アメリカ軍にまで、悪影響を及ぼすことになろう。