A・ネジャド大統領のコロンビア大講演

2007年9月30日

 イランのアハマド・ネジャド大統領が、国連会議出席のついでに、コロンビア大学で講演することになり、彼は喜んで講演に応じた。述べるまでも無く、このアハマド・ネジャド大統領の講演には、在米ユダヤ人の多くが反発し、コロンビア大学の周辺では、反対デモが起こったようだ。

 彼の講演の際にも、邪魔が入ったようだが、ニュースで流れてくる状況からすると、意外に紳士的な対応が、コロンビア大学ではなされたようだ。そのことは、多くの未来を予測させるものではないかと思われる。

 まず、一大学ではあるが、コロンビア大学がアハマド・ネジャド大統領に対し、彼がアメリカ国民に、直接訴える機会を作ったということだ。その講演の中では、幾つもの危険な発言が出てくる可能性があったはずなのだが、その不安をものともせずに、コロンビア大学は講演会を開催したし、アメリカ政府も反対しなかったのだ。

 そのことは、今後アメリカのイランに対する対応に、大きな変化を感じさせるものだ。そんなことを考えながら、電車のなかでフォーリン・アフェアーの論文を読んでいると、私の推測と多くの点で合致する内容が盛り込んであることに気が付いた。

 アメリカはイランに対する対応を、近い将来変更させる可能性が高いのではないか。かつての中国と同じように、イランが地域の大国になっていくことを見越し、イランが地域大国であることを認めるのと交換に、アメリカはイランとの間で、湾岸地域をはじめ、中東地域で相互の利益を守っていく、という方向に進むのではないかということだ。

 興味深かったのは、アハマド・ネジャド大統領の、コロンビア大学での講演と訪米についての、イスラエルの反応だった。ハアレツ紙の調査によれば、アハマド・ネジャド大統領の講演に対するイスラエル国民の反応は、おおよそ以下の通りだった。

:彼の講演が成功だったからイスラエルにマイナスー43パーセント、

:対話はいことだー16パーセント、

:彼はクレイジーとアメリカ国民が知ったからイスラエルにとってプラスー20パーセント

 つまり、59パーセントのイスラエル国民は、アハマド・ネジャド大統領の講演は、彼にとって成功であったと判断したということだ。

 イスラエルもアメリカも、次第に冷静にイランを見始めている、ということではないのか。そうであるとすれば、日本もそろそろ、イランに対する対応を冷静に考えるべきではないのか。日本が盲従するアメリカは、既に方向を変えつつあるのだから。

 先日会ったイラン大使は「アメリカの大統領が変わる前に、日本はあらゆることを考えて変化に備えるべきだ】と語っていた。彼はイランに対する対応とは言わなかったが、それを十分に匂わせてはいた。