レイムダック?米の中東外交

2007年9月28日

 今年11月半ばに、アメリカは中東和平会議を計画している。この会議開催に向けて、イスラエルはもとより、アラブ各国に対して参加を呼びかけているが、最も重要なシリアの参加が危ぶまれている。

 中東和平会議の中心であるパレスチナについて、ファタハ側は積極的に参加の意向を示しているが、ハマース側はこの会議への参加は、パレスチナ問題に対する裏切り行為である、と猛反対している。

 ブッシュ大統領は今度の会議で、パレスチナ国家設立を前進させたい、と強調しているが、いったい何を考えているのであろうか。これまで聞こえてきた、アメリカのパレスチナ問題解決への考えは、まず西岸にパレスチナ国家を設立するというものだ。

 しかし、西岸のほとんどはいまだにというよりも、日に日にパレスチナ側の土地が減少し、イスラエル側が拡大するという状況が続いている。西岸の18パーセント程度が、パレスチナ側に残っているだけだということだ。

 パレスチナのマハムード・アッバース議長は、67年の国境について言及しているが、どこにもその実感が無い、あくまでもアメリカとイスラエルの、ご機嫌を損ねない範囲での、発言ということであろう。

 イスラエル側が、西岸地区の入植地のほとんどを撤廃して、パレスチナ側に返還し、67年の国境ラインに近づけるとは思えない。ということは、パレスチナ側に対して、名目的な独立(?)を与えて、問題のファイルをとりあえず閉じたい、というのがアメリカの本音であろう。

 こうしたアメリカの対応と、イスラエルの考えを、見抜いているアラブの首脳は少なくない。今回の中東和平会議について「参加は時間の無駄だ」とみなしている首脳がほとんどであろう。もちろん、パレスチナ、エジプト、ヨルダンはその限りではないが、いずれもアメリカに対する、依存度の高い国々ということであろう。

 アラブ首脳たちの中東和平会議への見方は「ライスとブッシュが、アラブ世界ムスリム世界からよく見られたい、有終の美を飾りたいだけ」ということになるのだ。アラブ首脳たちは、会議が結果的には「乾杯と挨拶交換の場に終わる」という風に予測しているのだ。

 イスラエルのオルメルト首相は、いまスキャンダルにまみれ、パレスチナとの本格的な交渉、妥協が出来る状態には無い。ましてや、シリアとの交渉は夢のまた夢であろう。イスラエルの評論家や政治家の間では、中東和平はこれから20年30年かけても解決は無理だ、と考えている人たちがほとんどだという記事が、イスラエルの新聞で紹介されてもいた。

 アラブ側もイスラエル側も期待しない、アメリカ主導の和平会議に代わりうるのは、国連の仲介による和平会議ということになるのだが、その国連にもこれといった具体案があるわけではない。要はお互いがリップ・サービスを続けて、軍事緊張を緩和させたいということであろう。